大質量ブラックホール周囲の塵のドーナツ形成をシミュレーションで再現

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【2012年3月13日 ハーバード・スミソニアン天体物理学研究所

米研究機関のチームが、数十億光年かなたの銀河中心にある大質量ブラックホールの周囲にガスと塵のドーナツ状構造が作られる様子を、シミュレーションで再現することに成功した。


クエーサーのイメージ図

クエーサーの正体とされる大質量ブラックホールから高エネルギー粒子のジェットが噴き出すイメージ図。挿入図は、天文衛星によるX線画像。クリックで拡大(提供:NASA/Chandra)

数十億光年というはるかかなたにあっても非常に明るく光る「クエーサー」は、銀河中心にある大質量ブラックホールが大量の物質を飲み込む際に放たれるエネルギーで輝く活動銀河核の一種と考えられている。

こうしたクエーサーなどの活動銀河核は、その中で高温ガスの風が吹き荒れているものとそうでないもの、また、濃い塵の雲でさえぎられているものとそうでないもの、などさまざまなタイプがある。こうしたタイプの違いは、クエーサーの核の周囲にドーナツ状に集まった塵やガスを地球から見る際の、角度の違いによるのではと考えられている。たとえば、ドーナツ状構造を垂直方向から見ると穴の中の中心核はよく見えるが、水平方向から見ると塵にさえぎられて中心部は見えなくなる、といった具合だ。

米ハーバード・スミソニアン天体物理研究所のChris Hayward氏らは、クエーサーの観測をさえぎるこうした構造の形成について、コンピュータシミュレーションによる研究を行った。銀河全体にわたる大スケールから銀河中心の1光年より小さいスケールまでをうまく取り扱うのは難しかったが、高温ガスが中心核に流れ込む様子を巧みにモデル化し、クエーサーの中心にあるブラックホールの周囲にこのドーナツ構造が形成される様子を初めてシミュレーションで再現することに成功した。

この研究では、この「ドーナツ」が視野をさえぎる邪魔者というだけではなく、ブラックホール周囲に集まった物質の降着円盤にガスや塵を送り込む役割を担っていることもわかった。

クエーサーがどのように生まれて成長し、どうやって膨大なエネルギーを生み出すのか。これまでよくわかっていなかった疑問に少しずつ迫っていけそうである。