160年前に起こった星の「臨死体験」

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【2012年2月29日 NASA

りゅうこつ座エータ星の「臨死体験」のあとにできた人形星雲を詳細にとらえたハッブル宇宙望遠鏡の画像が公開された。近い将来大規模な超新星爆発を起こすとみられる恒星のひとつでもある。


りゅうこつ座エータ星とそれを包む人形星雲

りゅうこつ座エータ星とそれを包む人形星雲。紫外線と可視光線データを合成。クリックで拡大(提供:ESA/NASA)

りゅうこつ座エータ星は19世紀以前は観測ができないほど暗い星だった。だが19世紀になって急激に明るさを増し、1843年4月にはシリウスに次いで夜空で2番目に明るい星になった。シリウスの約1000倍も遠くにありながらこれだけ明るかったのだから驚異的である。その後、年が経つにつれ再びだんだんと暗くなり、20世紀初めには肉眼では完全に見えなくなった。以来この星の明るさは変化し続けているが、1843年の明るさに到達したことはない。

りゅうこつ座エータ星は連星系を成しているが、2つのうち大きい方は一生の最終段階にある巨大で不安定な星であり、19世紀に観測された爆発はこの星の「臨死体験」とも言えるものだった。超新星爆発のように見えるが、星が崩壊する直前に止まってしまうため、擬似超新星爆発(supernova imposter)と呼ばれている。

1843年当時は爆発を詳しく観測できる望遠鏡がなかったが、その影響を現在研究することはできる。約160年前の爆発で放出された物質でできた巨大な星雲は「人形星雲」とも呼ばれ、幾度となくハッブル宇宙望遠鏡の観測対象となっているが、今回公開された鮮明な画像では恒星物質が非対称な方向に飛ばされながらも巨大なダンベル状の形を形成している様子がわかる。

りゅうこつ座エータ星は、過去だけではなくその未来も興味深い。近く超新星爆発を起こすと思われる天体の中で最も地球に近いものの1つだからだ(ただし、天文学でいう「近い未来」とは100万年後にもなり得る)。その時は、1843年の爆発よりもずっと明るくなるだろう。

また、真の明るさが観測史上最高とされる超新星2006gyの由来となった恒星はりゅうこつ座エータ星と同じタイプということなので、りゅうこつ座エータ星の超新星爆発にも「期待」できそうである。

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