ブラックホールに飲み込まれるガス雲

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【2011年12月20日 ヨーロッパ南天天文台

南米チリにある大型望遠鏡「VLT」が、天の川銀河の中心にあるブラックホールに地球の数倍の質量を持つガス雲が落ち込んでいる様子を捉えた。この雲は数年以内にはブラックホールによってばらばらに引き裂かれると考えられる。


ガスがブラックホールへと落ち込んでいくシミュレーション

ガスがブラックホールへと落ち込んでいくシミュレーション。赤く描かれているのがガス雲とその軌道。青く描かれているのがブラックホールの周りを回っている星とその軌道。クリックで拡大(提供:ESO/MPE/Marc Schartmann)

およそ20年間にわたって、ヨーロッパの研究チームはヨーロッパ南天天文台(ESO)の望遠鏡で天の川銀河の中心にある大質量ブラックホールの周辺にある星の動きを観測してきた。そして今回、ブラックホールに近づく新しい変わった天体を発見した。

この天体は、7年の間にブラックホールに近づく速度がおよそ2倍になり、時速800万kmにまで達している。そして2013年半ばには、ブラックホールを取り巻く「事象の地平面」と呼ばれる光も脱出できない範囲から、わずか400億kmにまで近づくと予想される。

天体の質量は地球の約3倍程度で、周辺の星と比較するとその温度も随分と低いようだ。その正体はガス雲で、太陽の400万倍もの質量を持つブラックホールによって、ばらばらに引き裂かれてしまうと考えられる。ガス雲の一部は既にばらばらになり始めており、その兆候は2008年から2011年にかけて捉えられていた。2013年にはガス雲は高温になり、X線を出し始めると予想される。そして数年以内に完全に崩れてしまうだろう。

このガス雲がどのようにできたのかは、よくわかっていない。一説には、近くの大質量星が恒星風を噴き出し、流れ出たガスがブラックホールの軌道近くで雲を形成したのではないかと考えられている。

これまでSF小説などでは、天体がブラックホールに近づくとその強力な重力によってスパゲッティのように引き伸ばされるといった描写がされてきたが、実際にはどうなるのか、もう間もなく実際に観測できると期待される。

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