不規則に変動するブラックホールのジェット

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【2011年9月26日 JAXA

JAXAのポシャック・ガンディー研究員を中心とするチームは、赤外線天文衛星「WISE」のデータから、ブラックホール周辺が突然明るく輝きだす珍しい現象をとらえた。ブラックホールとそのジェットにかつてない精度で迫る成果だ。


ブラックホールとジェットの想像図

ブラックホールGX 339-4連星系とそこから噴き出すジェットの想像図。右側の伴星から物質を奪っているのが見える。クリックで拡大(提供:NASA)

ブラックホールからの赤外線の変動の様子

ブラックホールGX 339-4からの赤外線の強い増光と減光を示すアニメーション画像。約1日の変動をカバーし、早回しで再現している(提供:WISE/Poshak Gandhi (JAXA))

光ですら抜け出せない強い重力を持つブラックホールでは、激しい勢いで吸い寄せられる物質が、ブラックホールのすぐそばからガスジェットとなって噴出している。また、ブラックホールの周囲には引き寄せられつつある物質が「降着円盤」となって渦巻いている。

ブラックホール周辺の極限環境についての理解を深めるために、このジェットの研究が進められている。ブラックホールに物質を供給する降着円盤やジェットそのものについては、そこから放出されるX線、ガンマ線、電波などの観測を通じて理解が飛躍的に深まっているが、肝心のジェットの付け根にある最も明るい部分については、何十年にもわたる取り組みにもかかわらず研究が困難なままだった。

だが、NASAの赤外線天文衛星「WISE」による赤外線観測で、恒星質量ブラックホール周辺から吹き出すジェットの根元部分の領域が初めてとらえられ、その領域のジェットの物理に迫ることができた。領域の狭さは、太陽ほど離れたところに置いたコインほどしかない。

「太陽が突然でたらめに爆発を繰り返し、ほんの数時間のあいだ3倍も明るくなり、また元に戻ったと考えてみてください。このジェットで見られたのは、このような激しい変化だったのです」(ガンディー氏)。

さいだん座の方向約2万光年以上かなたにある「GX 339-4」と呼ばれるこのブラックホールは、太陽の6倍以上の質量があると考えられており、以前から観測が行われていた。恒星が超新星爆発を起こしてできたブラックホールで、その周囲を回る伴星から供給された物質がブラックホールへと落ち込み、その残りが光速に近い速さでジェットとして噴き出していると考えられる。

WISEは、その観測プロジェクトの1つ「NEOWISE」で同じ天域を繰り返し観測することで、ジェットの変動をとらえることに成功した。

「ブラックホール周辺の増光現象をとらえるためには正しい場所を正しいタイミングで観測する必要があります。WISEは高感度な赤外線画像を1年にわたって11秒毎に1枚ずつ撮り続け、全天をカバーすることで、この珍しい現象をとらえることができました」(WISEのプロジェクトサイエンティスト、ピーター・アイゼンハルト氏)。

得られた結果は驚くべきものだった。ジェットの活動の変動は大きく不規則的で、11秒から数時間までさまざまだった。赤外線の色は大きく変化しており、ジェットの根元付近のサイズが変化していることを意味している。ジェットの根元の半径はおよそ2万4000kmで、最大で10倍程度以上も変化していた。

「ブラックホールからのジェットを消防用のホースに例えると、私たちが発見したのは、水の流れが間欠的で、ホースの太さ自体も大きく伸び縮みしているということです」(ガンディー氏)。

この新たなデータは、地球表面の3万倍にもおよぶブラックホールの磁場を最も精度よく測定することも可能にした。このような強い磁場こそが、物質の流れを加速し絞り込んで細いジェットにするのに必要となる。異常な現象のメカニズムを、かつてない精度で理解することができるようになった。

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