幼年期の宇宙に大人の銀河団が存在

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【2011年3月11日 ESO

ビッグバンから約30億年という宇宙初期の時代に、活発な星生成を終え「大人の落ち着き」を見せる銀河団がすでに存在することがわかった。


(銀河団「CL J1449+0856」の画像)

中央付近の赤い点の集まりが銀河団「CL J1449+0856」。ハッブル宇宙望遠鏡のデータに、すばる望遠鏡、VLTのデータをもとに着色を施した赤外線画像。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, R. Gobat)

すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の大型望遠鏡(VLT)などの連携により、宇宙誕生から約30億年という早い時期にじゅうぶん成長した銀河団(注1)が存在したことが明らかになった。

フランスのRaphael Gobat氏らのチームが、ESOが運営するチリ・パラナル天文台のVLTを用いて銀河団「CL J1449+0856」を観測したところ、約137億年前の宇宙誕生から30億年ほど経った時期の宇宙に存在するものであることがわかった。さらにハッブル宇宙望遠鏡(HST)で銀河団を詳細に観測したところ、ほとんどの銀河では星生成が行われておらず、生まれてから約10億年経過した星々で構成されているらしいことも判明した。「おとめ座銀河団」(注2)と同程度の質量の、成長しきった銀河団ということになる。

この研究結果は、これまで星生成が活発な若い銀河が多いとされてきた初期の宇宙にも、成長しきった銀河団が存在することを示した。現時点の理論ではまれなケースと思われるが1つでも見つかったのは大きい。今後もしさらに同様の天体が見つかるようなら、初期宇宙に対する見方にも大きく影響するだろう。

注1:「銀河団」 重力でグループを作っている銀河の集団のことで、小規模なものを「銀河群」、大規模なものを「銀河団」という。

注2:「おとめ座銀河団」 「天の川銀河」が属する「局部銀河群」の近傍にあるおとめ座方向の銀河団で、1000個以上の銀河が集まっている。

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