「かぐや」、世界で初めて月面上のウラン濃度分布を明らかに

【2010年11月2日 JAXA

月周回衛星「かぐや」の画像ギャラリーに、月面上のウランの濃度分布図が公開された。これまで観測が難しくわかっていなかったウランの濃度分布を世界で初めて明らかにしたものだ。


(GRSによる月面の(左)ウラン/(右)トリウム濃度分布)

GRSによる月面の(左)ウラン濃度分布/(右)トリウム濃度分布。クリックで拡大(提供:JAXA)

ウラン、トリウム、カリウムは、月の冷却に関する追跡元素として使用することができる。月が冷えて固まる際に、残されたマグマの中で濃縮される性質があるからだ。また、3つの物質とも自然放射性元素であるため、月の熱源としても重要な働きを担っていたと考えられている。

また、ウランとトリウムは難揮発性元素であり、これら2つの元素の月面での濃度分布を同時に観測することは、月の起源を解明する上でひじょうに重要であると考えられている。過去の観測で、トリウムとカリウムの月面濃度はわかっていたが、ウランの濃度分布は観測が難しく明らかにされていなかった。

「かぐや」は、同衛星に搭載された世界最高感度を持つガンマ線検出器「GRS」を使って、月面のウランを検出し、月面のウラン濃度分布を世界で初めて明らかにした。また、同時に精密なトリウム濃度分布も明らかにした。

これまで、2つの物質の分布は似たものだろうと考えられていたが、「かぐや」による観測によってその推測が初めて確かめられた。さらに、月全体にわたるウランとトリウムの濃度比は、月隕石や月から持ち帰られた月のサンプルなどに見られた濃度比、さらに始原的隕石(CIコンドライト)やシリケイトアース(地球のコア部をのぞいた残りの部分=岩石圏)における濃度比と、ほぼ一致していることも明らかとなった。

またこれまでの研究では、トリウム濃度は月の裏側高地で低いが、広い領域にわたってほぼ一定であると報告されてきた。しかしGRSの観測によって、トリウム濃度はほぼ一定であること、一方ウランの濃度は低いものの裏側高地の西側と東側で濃度に違いがあることが明らかとなった。

今後この結果をGRSで観測された他の元素に関する解析結果と組み合わせることにより、月の進化の一端が解き明かされるのではないかと期待されている。

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