赤外線でとらえた、美しい棒渦巻銀河 NGC 1365

【2010年9月30日 ESO

ヨーロッパ南天天文台(ESO)の大型望遠鏡(VLT)に搭載されているカメラHAWK-Iが棒渦巻銀河NGC 1365を赤外線でとらえ、可視光画像以上の美しい姿を見せてくれた。


(NGC 1365の(左)可視光画像と(右)赤外線画像)

NGC 1365の(左)可視光画像と(右)赤外線画像。クリックで拡大(提供:ESO/P. GrosbØl)

NGC 1365は、ろ座銀河団に属する銀河の1つで、地球から6000万光年の距離にある。棒渦巻銀河の中ではもっともよく研究されており、まっすぐな棒状構造と外側の2つの腕を持つ、完璧と言えるほどの姿をしている。銀河の中心に近い領域には第2の渦巻き構造があり、銀河全体には暗いちりの筋模様が走っている。

NGC 1365は、渦巻銀河の形成と進化の研究における格好の対象となっている。HAWK-Iによる最新の赤外線画像は、可視光画像に比べてちりによる影響が少ないため、棒状構造と腕に存在している膨大な数の星からの光を鮮明に見せてくれている。

巨大な棒状構造によって銀河の重力場がかく乱されることで、ガスが圧縮されている領域で星形成が引き起こされる。HAWK-Iの観測データは、銀河内で起きている複雑な物質の流れや、その流れが新しい星を生み出すもととなるガスの塊にどのような影響を与えるのかを理解する研究に役立てられる。

銀河は地球から離れているため、この画像では個々の星の姿までは見えず、星団のほとんどは小さな塊のように見えている。多くの若い星団は腕の輪郭をなぞるように存在しており、1つ1つの星団は1000万歳未満の若くて明るい星が数百から数千個集まってできている。また、銀河の中心核に近い領域にあるガスやちりの中では、次々に多くの星が生まれている。

一方、棒状構造では星形成はとっくに終わっており、この領域に存在しているのはほとんどが年老いた星だ。さらに、棒状構造を通じて銀河の中心へとガスやちりが流れこんでいるのだが、その流れ込む先には超巨大ブラックホールが存在している証拠が得られている。しかし、その姿は銀河の中心領域にひしめく無数の星の中に隠れている。

NGC 1365は、巨大な2つの腕を含めると、差し渡し20万光年もの範囲に広がっている。銀河の中心核のまわりを回る星やちりの回転速度は中心からの距離によって異なり、外側の領域は3億5000万年ほどかけて1周している。

NGC 1365をはじめとする棒渦巻銀河の観測から、わたしたちの天の川銀河も棒状渦巻銀河なのではないかという可能性が示唆されている。この種の銀河は宇宙ではありふれた存在であり、渦巻銀河の3分の2が棒状構造を持っていることが近年の研究で示されている。NGC 1365の観測・研究は、天の川銀河を理解するためにも重要なのである。