星の誕生現場の輝き、新現象「コア・シャイン」を発見

【2010年9月28日 MPIA

星の誕生現場である分子雲100個以上の観測で、半数以上の中心領域から中間赤外線が放射されていることが明らかになった。この現象は、分子雲の内部に存在する大きなちりの粒子によるものだ。今後この現象の観測は、深いガスとちりに閉ざされた星の誕生のもっとも初期の段階を知るための新たな手法になりそうである。


(分子雲CB 244の(左)可視光画像と(右)赤外線画像)

分子雲CB 244の(左)可視光画像と(右)赤外線画像。クリックで拡大(提供:MPIA)

(分子雲L 183の赤外線画像)

分子雲L 183の赤外線画像、(左)分子雲の周囲にある、小さい粒のちりからの近赤外線放射をとらえたもの、(右)分子雲の中心部分に存在する、大きい粒のちりからの中間赤外線放射(コア・シャイン)をとらえたもの。クリックで拡大(提供:MPIA, J. Steinacker et al.)

パリ天文台のLaurent Pagani氏と独・マックスプランク天文学研究所のJürgen Steinacker氏らの研究者グループが、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーを使って、地球から300〜1300光年の距離にある分子雲110個を調べた。

得られたデータを分析した結果、観測された分子雲の約半分で、中心部分に存在する大きい粒のちりから中間赤外線が放射されていることが明らかになった。Pagani氏らの研究グループはこの現象に“coreshine(コア・シャイン)”という呼び名をつけた。可視光で見ることはできないが、文字どおり“芯の部分が輝いている”現象だからである。

研究グループは、地球から約360光年の距離に位置するへび座の分子雲L 183から中間赤外線放射を検出した。これは想定外のことであった。放射の起源は分子雲の中心部分とみられ、コンピュータ・シミュレーションとの詳しい比較などを行った結果、赤外線を放射しているちりの粒子が直径1μm(マイクロメートル=1mの100万分の1)ほどであることを明らかにした。1μmという予想外の大きさは、雲が崩壊する以前からすでに粒子の成長が始まっていることを示している。

1枚目の画像は、ケフェウス座の方向約650光年の距離にあるCB 244と呼ばれる分子雲の擬似カラー画像である。このような雲の中で、天の川銀河からの光がさまざまな形で散乱されている。可視光は主に雲の外縁部にある小さな粒子で反射されたものだ。一方「コア・シャイン」と名づけられた中間赤外線放射は、雲の中心部に存在する大きな粒子のちりからのものである。

星は、ガスとちりの濃い領域である分子雲で誕生する。分子雲が自身の重力で崩壊すると、中心部の密度と温度が高くなって原始星が誕生し、やがて星は核融合反応を始め安定した星として輝くようになる。同様のプロセスでわたしたちの太陽も誕生し、核融合反応によって輝き、地球上の生命はその光や熱の恩恵を受けている。しかし、そんな星を生み出すもととなる分子雲の崩壊という、もっとも初期の段階についてはほとんどわかっていない。

研究グループによると、「コア・シャイン」を調べることで、ちりの粒子の大きさや密度、分子雲の中心部分の年齢、ガスの空間分布、やがて惑星の材料となる物質、そのほか雲の中で起きている化学的なプロセスなどの情報がもたらされるという。

「コア・シャイン」は、星形成のもっとも初期段階を調べる新しい観測の窓として役立てられることになりそうだ。