西山さんと椛島さん、わし座に新星を発見

【2010年9月13日 VSOLJニュース(250)】 9月14日更新

九州の新天体捜索チーム、西山さん椛島さんのコンビが9月11日(世界時、以下同様)、わし座に新星を発見した。今年M31やM33にも多くの新星を発見しているお二人だが、天の川銀河内の新星発見は今年5個目となる。


VSOLJニュースより

著者:前原裕之さん(京都大学花山天文台)

私たちの銀河系には多い年で年間10個程度の新星が発見されます。しかし、天の川に沿った方向は星々の間に漂うガスやチリの影響で天体からの光が吸収されてしまい見通しが効かないため、私たちが観測できる新星は銀河系の中に出現する新星のうちの一部です。

近年では、吸収の影響が少ない赤い光に感度の高い冷却CCDカメラがアマチュアの間にも普及したことから、CCDカメラを用いた捜索で、ガスやチリによる吸収の影響を強く受けた新星がいくつか見つかるようになりました。今回わし座とたて座の境界付近に発見された新星もそのような天体の1つと考えられます。

新星を発見したのは福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチームで、これまでにも多数の新星を発見してきた捜索者です。お二人は9月11.485日に105mmレンズ+CCDカメラで撮影した2枚の画像からわし座に位置する12.4等の新天体に気づきました。11.505日に40cm望遠鏡で撮影した画像から求めたこの天体の位置は以下のとおりです。

  赤経  18時47分38.38秒
  赤緯 -03度47分14.1 秒 (2000年分点)
  新星周辺の星図

この天体は、発見されたその晩のうちに京都産業大学の1.3m「荒木望遠鏡」と広島大学の1.5m「かなた望遠鏡」で分光観測が行われ、膨張速度がおよそ秒速1500kmの水素や酸素の輝線がみられることから、古典新星であることが確認されました。どちらの望遠鏡も大学附属の施設としての柔軟な運用体制と豊富な観測時間を生かして、突発天体の早期観測や長期間のモニター観測が必要な研究に用いられており、今回もその高い機動性を発揮して発見直後の分光観測に成功しました。

筆者が行った多色測光では、この天体はひじょうに赤い色をしており、波長の長いIcバンド(700-800nm付近にピーク)では10.5等でしたが、肉眼の感度のピークに近いVバンドでは16等と暗く、星間吸収の影響を強く受けているものとみられます。今後どのような変化を見せるか楽しみです。

※アストロアーツ注:ニュース公開当初、西山さんと椛島さんが今年天の川銀河内に発見した新星の数は今回で3個目とお伝えしましたが、5個目でした(はくちょう座V407を含む)。お詫びして訂正いたします(誤記はアストロアーツで追記した箇所であり、オリジナルのVSOLJニュースにはありませんでした)。


わし座の新星の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。

また、新しいデータや番組を入手できる「コンテンツ・ライブラリ」では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルも公開しています。あわせてお楽しみください。

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