3つの天文衛星がとらえた銀河スペクタクル、アンテナ銀河最新画像

【2010年8月6日 NASA JPL

衝突銀河として有名な「アンテナ銀河」を、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーとX線観測衛星チャンドラ、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)がとらえ、そのデータを重ね合わせた最新画像が公開された。


(スピッツァーとチャンドラ、HSTによる観測データを重ね合わせたアンテナ銀河の画像)

スピッツァーとチャンドラ、HSTによる観測データを重ね合わせたアンテナ銀河。クリックで拡大(提供: Chandra: NASA/CXC/SAO, Spitzer: NASA/JPL-Caltech, Hubble: NASA/STScI )

アンテナ銀河は、からす座の方向約6200万光年の距離にある有名な衝突銀河だ。NGC 4038とNGC 4039という2つの銀河が1億年以上前に衝突を起こし、今も変形を続けている。

衝突によって、2つの銀河を構成していたちりやガスから、数百万個の星が形成された。そのうち、ほとんどの大質量星は、誕生から数百万年が経過した後に超新星爆発を起こし、すでに一生を終えている。

画像中、青の擬似カラーで示されているのは、X線を放射する高温の星間ガスである。これらのガスは超新星爆発で放出されたもので、酸素や鉄、マグネシウムやケイ素などを含んでおり、新しい星や惑星の材料となる。

明るい点のように見えているのは、大質量星の残骸である中性子星やブラックホールへ落ち込んでいく物質がX線で輝いているところだ。アンテナ銀河には、太陽質量の百倍ほどの質量をもつブラックホールも存在している。

一方、スピッツァーによる近赤外線の波長の観測では、生まれたばかりの星の放射によって暖められたちりの雲(擬似カラー:赤)がとらえられている。2つの銀河が重なっている領域では、赤外線でもっとも明るく輝く雲が見えている。

そのほか、黄や白っぽい色をしているのは、HSTがとらえた年老いた星や星形成領域である。また、ちりのつくる繊維状の構造が茶色く見えている。そのほか、可視光の波長では、数千個の星が集まる星団が比較的暗い天体としてとらえられている。