互いに傾斜した公転軌道を持つ2つの系外惑星

【2010年5月28日 HubbleSite

アンドロメダ座υ(ウプシロン)星のまわりを回る2つの惑星が、互いに30度も傾いた公転軌道を描いていることが明らかになった。このような惑星の配置が明らかになったのは初めてのことだ。惑星の軌道を大幅に変えるような激しい現象が起こったためとみられており、惑星系の形成と進化に関する理論に大きな影響を与えることにそうだ。


(アンドロメダ座υ星とそのまわりを回る3つの惑星のイラスト)

アンドロメダ座υ星とそのまわりを回る3つの惑星のイラスト。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and A. Feild (STScI)、以下同様)

(太陽系とアンドロメダ座υ星の惑星系の惑星軌道の比較)

太陽系(左)と、アンドロメダ座υ星の惑星系(右)の惑星軌道の比較。クリックで拡大

地球から44光年の距離にある恒星、アンドロメダ座υ星のまわりには、10年ほど前から3つの惑星の存在が知られてきた。米・テキサス大学オースティン校マクドナルド天文台のBarbara McArthur氏らの研究チームによって、そのうち2つの惑星、c星とd星が互いに30度も傾いた公転軌道をもっていることが明らかになった。

この成果は、地上に設置された望遠鏡によって14年間かけて得られた恒星の視線速度(恒星が地球から見て近づいたり遠ざかったりする速度)のデータと、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)による位置天文学(アストロメトリ)法を利用した観測によってもたらされた。恒星の位置や動きは惑星の重力の影響で変化するので、その影響の度合いを調べることで惑星のこともわかるというわけだ。

惑星の公転軌道が傾斜した原因について、McArthur氏は複数のシナリオを挙げている。惑星が内側へ移動したことによる相互作用、惑星同士の散乱現象で他の惑星が追い出された、υ星の伴星の影響で惑星の軌道がずれた、以上の3つである。

研究チームの一員で、系外惑星力学のエキスパートである米・ワシントン大学のRory Barnes氏は「力学的な分析によると、もともとこの惑星系に存在していた天体が外へ追い出された結果、軌道が傾いた可能性が高いです。しかし、距離的に離れた伴星によって追い出されたのか、それとも惑星系が別の惑星をはじき飛ばすような形で最初から形成されたのかは、わかりません」と話す。

また、惑星の軌道が傾斜していることだけでなく、惑星の質量も明らかになっている。これまでc星とd星の質量は、それぞれ(最低で)木星の2倍と4倍と計算されていたが、今回の研究で14倍と10倍であることがわかった。

McArthur氏は次のように話している。「アンドロメダ座υ星は、わたしたちの太陽系と同じようなプロセスで形成された可能性が高いです。しかし、形成過程の後半になって、太陽系とは異なる進化をするような種がまかれたのです。これまで、惑星は中心星を取り巻くちりの円盤の中で誕生し、その後互いに同じ公転面上に残ると考えられてきましたが、すべての惑星系がそのような進化をたどるとは限らないのです」

同氏はさらに「これで、太陽系と同様にすべての惑星が同じ公転面に軌道を持つという大前提がなくなったのです。今後、惑星系の研究はより複雑化するでしょう」と話している。

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