衛星ミマスに見つかった、不思議な形の暖かい領域

【2010年3月31日 JPL

NASAの土星探査機カッシーニは、2月13日に土星の衛星ミマスへ接近通過した。その際に得られた表面温度のデータから、不思議な形をした暖かい領域があることがわかった。


(予想されていた温度分布や実際の温度分布などの画像)

左上から時計回りに、予想されていた温度分布、実際の温度分布、可視光画像に実際の温度分布を重ねたもの、可視光画像。温度表示は、青から白に向かうほど高い。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/GSFC/SWRI/SSI)

NASAの土星探査機カッシーニは、今年2月13日に土星の衛星ミマスに接近通過した。その際に得られた画像やデータから、これまででもっとも高解像度の温度分布図が作成された。

ミマスの表面温度の観測に使用されたのは、カッシーニに搭載されている複合赤外線分光計器「CIRS」。観測前の予測では、表面温度の変化はゆるやかで、午後早くに赤道付近でピークになるとみられていた。

しかし、もっとも温度が高くなったのは朝であった。周囲の領域が摂氏マイナス196度であったのに対し、もっとも温度の高い領域は摂氏マイナス181度。可視光画像に温度分布のデータを重ね合わせると、その領域は、有名なコンピュータゲームのキャラクターのような形に浮かび上がった。なぜこのようにシャープなV字型となっているのかは不明で、研究者も首をかしげている。

CIRSチームのリーダーをつとめるJohn Spencer氏は「これは、表面にある物質の状態によるものかもしれません。たとえるなら、古くて密度の高い雪と、降ったばかりのパウダースノーの違いのようなものです」と話している。

氷は密度が高いと熱をすぐに逃がしてしまう。そのため、表面が冷たく保たれる。一方、氷がパウダー状で密度が低い場合、熱が保たれて表面に熱がたまる。このような理由で温度差が生じているのではないかと考えられている。

もし温度差が表面の状態によるものだとしても、境界線がはっきりしている理由は謎だ。Spencer氏は、ハーシェルクレーターを作った天体の衝突で、表面の氷が融け、衛星の表面に水がばらまかれた可能性をあげている。水は一瞬で凍り、固い表面となったかもしれない。しかし、一番表面にあった厚い層は、天体の衝突によって蒸発したはずで、なぜそれが無傷の状態にあるのかが疑問だ。謎は尽きないようである。