太陽光を反射する、タイタンの巨大な湖

【2009年12月22日 JPL

NASAの土星探査機カッシーニが、土星の衛星タイタンの北極にある湖が鏡のように太陽光をまぶしく反射しているようすをとらえた。


(2009年7月にカッシーニがとらえたタイタンの画像)

2009年7月にカッシーニがとらえたタイタン。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/University of Arizona/DLR)

土星探査機カッシーニが、土星の周回軌道に入り観測を開始したのは2004年のことである。これまでの観測で、土星の衛星タイタンの北半球には(南半球に比べ)多く湖が存在すると予測されていた。しかし、タイタンの北極は過去の約15年間、太陽光が射さなかった。タイタンの「春分」である2009年8月が近づいて、北極の湖を太陽が照らし始めたのだ。

タイタンを覆う大気は、ほとんどの波長で太陽光の反射を遮ってしまうが、この画像は、カッシーニの可視光・赤外線分光装置によって、7月8日に撮影されたものである。カッシーニの画像チームでは、このような輝きがとらえられるのをずっと待ち望んでいたという。

タイタンと地球は多くの共通点を持つので、低温のタイタンの表面に炭化水素の海や湖が存在することが20年前から予測されてきた。カッシーニによる探査で海の存在は確認できなかったものの、南北の極域で湖を示唆するデータが得られた。そのうち、南極では最大の湖Ontario Lacusが液体で満たされていることは確認されている。一方で、南極より大きな湖が存在するとの予測に反し、北極における液体の存在証拠と呼べるような決定的な証拠画像は、これまでに撮影されたことがなかった。

カッシーニの可視光・赤外線分光装置チームのメンバーで、ドイツ航空宇宙センターのKatrin Stephan氏は「この輝きを見て、地球周回軌道上からとらえた地球の画像を思い出し、たちまち興奮を覚えました。しかし、この輝きが雷や火山の爆発ではないかどうか、さらなる確認作業が必要でした」と話す。

研究チームでは、この太陽光の反射がKraken Mareと呼ばれる湖の南側の岸に相当することを明らかにした。Kraken Mareの面積は40万平方kmもあり、地球最大の湖であるカスピ海(37万平方km)より大きい。

Stephan氏と同じチームのメンバーで、ドイツ宇宙航空センターのRalf Jaumann氏は、この画像から、Kraken Mareの湖岸線が過去3年間にわたり安定して存在していること、さらにタイタンの地表に液体をもたらす、メタンなどの循環が起きていることなどが示されたと話している。