観測史上最遠の爆発現象、GRB 090423

【2009年11月6日 University of Leicester

NASAのガンマ線バースト観測衛星スウィフトが、131億光年の彼方で起こったガンマ線バーストをとらえた。これまで観測の目が届かなかった「暗黒時代」を知る手がかりになりそうだ。


(GRB 090423の残光をとらえた画像)

GRB 090423の残光をとらえた画像(中央の赤い点)クリックで拡大(提供:A. J. Levan))

ガンマ線バースト(GRB)とは、宇宙で起こる最大級の爆発現象である。その多くは、ひじょうに重い恒星が核融合の燃料を使い果たし、重力崩壊を起こしてブラックホールになる際の大爆発であると考えられている。最初に、高いエネルギーの電磁波であるガンマ線が放出されるのが特徴で、その後はしばらく可視光線などの「残光」で輝く。

ガンマ線バーストは、地球から数十億光年以上の距離、つまり数十億年以上前の宇宙で見つかっている。しかし、GRB観測衛星スウィフトが今年4月23日に検出したGRB 090423の遠さと古さは格別だった。

スウィフトからの速報を受け、世界中の望遠鏡が残光を観測した結果、GRB 090423までの距離は約131億光年であることが明らかになった。これまで最遠とされてきたガンマ線バーストよりも約1.8億光年遠い。宇宙が誕生したのは約137億年前と考えられているので、GRB 090423は宇宙がおよそ6億歳だったときの現象だ。

ビッグバンから約8〜9億年が経過するまでの宇宙は、「暗黒時代」とも呼ばれている。当時の宇宙は、陽子と電子が結合した「水素原子」で満たされていた。その中から強力な光を放つ第1世代の星が誕生し、水素原子を再び陽子と電子に分離させたことで暗黒時代は終わった。

「この観測のおかげで、宇宙の地図に残された最後の空白地帯への探検を始めることができます」と研究チームを率いたNial Tanvir氏は話す。暗黒時代の天体、つまり第1世代の恒星や銀河は、ほとんど観測されていない。GRB 090423の発見は、単に遠方天体の記録を更新しただけではなく、これまで観測の目が届かなかった時代への扉を開いたことになる。