へびつかい座の新星を高校生が即時分光観測

【2009年8月18日 VSOLJニュース(219)】

8月16日(世界時)、へびつかい座に出現した新星を山形県の板垣公一さんが発見した。50個の超新星や彗星を発見するなど活躍している板垣さんだが、銀河系内の新星を発見したのは昨年9月以来2個目。発見を受けて、岡山県の美星天文台で「星の学校」に参加していた高校生たちが分光観測に成功した。


VSOLJニュースより

(著者:山岡均さん(九大理))

(へびつかい座新星2009の発見直後の画像)

へびつかい座新星の発見直後(16.526日)の画像。クリックで拡大(提供:板垣公一氏)

(へびつかい座新星2009の確認画像)

へびつかい座新星の確認画像。クリックで拡大(提供:門田健一)

星が爆発して急に明るくなる現象では、天体が見つかるとすぐに分光観測し、その膨張のようすを知ることがたいへん重要です。分光観測には専用の装置が不可欠で、またある程度の知識が必要なことから、誰にでもできるものではありませんでしたが、近年、公開天文台での研究学習体験の一環で、分光観測を経験することも増えてきました。今回、発見されたばかりの新星を分光観測したのは、岡山県井原市の美星天文台で開催された「星の学校」に参加した高校生たちです。

山形市の活発な天体捜索家である板垣公一(いたがきこういち)さんは、8月16.515日(世界時、以下同様)に撮影した画像で、10.0等級の新しい天体に気づきました。天体の位置は以下のとおりで、へびつかい座の最南部にあたります。

  赤経  17時38分19.68秒
  赤緯 -26度44分14.0 秒(2000年分点)
  新星周辺の星図

この2日前の14.142日に、ASAS-3システムによって自動撮影された画像では、この位置に14等より明るい天体はなく、また以前の画像でも20等より明るい天体はありません。急激に明るくなった天体であることがわかります。

岡山県井原市にある公開天文台、美星天文台では、17日から19日の予定で、「星の学校2009」が開催されていました。高校生たちが101cm望遠鏡などを用いて、恒星や小惑星などを観測し、観測で得られたデータの解析とその結果の考察を行うものです。発見報告に接して、岡山県立岡山操山(そうざん)高等学校の橘美希(たちばなみき)さんと田中亜紀子(たなかあきこ)さん、そして岡山県立岡山一宮高等学校の神田晃充(かんだあきみつ)さんの3人の高校生は、急遽観測対象をこの新星に定め、分光観測を行いました。その結果、この天体は高速で膨張していることが判明し、星表面の爆発現象=「新星」であることが明らかになったのです。この観測は、世界的にもこの天体を分光した最初のものであり、新天体情報を広報する国際天文学連合の中央天文電報局電子回報(CBET)によって世界中に公表されました。

膨張速度がきわめて早いことなどから、この新星の明るさの変化はひじょうに速いものと推測されます。実際、発見翌日の板垣さんの観測によると、発見時よりも1等級ほど暗くなっています。明るくなるのも速かったことと合わせ、この推測は当たっていそうです。今後の変化にも注目していきたいところです。

これまで難しかった分光観測が、公開天文台によって観測体験できるようになりました。新天体と出会うチャンスに巡り合えたことは、彼らにとって忘れられないものとなるでしょう。


へびつかい座の新星の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。

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