軌道を逆走する系外惑星WASP-17b

【2009年8月14日 STFC

8月12日、イギリスの系外惑星観測チームWASPが、さそり座の方向約1000光年先にある恒星WASP-17のまわりを通常とは逆方向に公転する系外惑星を発見したと発表した。惑星系の形成と進化の過程を知るうえで大きな手がかりとなりそうだ。


(恒星の前を通過する系外惑星(イメージ図))

恒星の前を通過する系外惑星(イメージ図)。クリックで拡大(提供:NASA/Hubble)

惑星は恒星のまわりを渦巻くガスやちりの雲から生まれるため、恒星の自転と同じ向きに公転するのが普通だ(太陽系の8個の惑星もそうである)。だが今回、英・キール大学のDavid Anderson氏とスイス・ジュネーブ天文台のAmaury Triaud氏が発見した系外惑星WASP-17bは、恒星の自転方向とは逆に回る前代未聞の「逆走惑星」らしい。生まれたばかりのころに、軌道上で他の惑星とニアミスを起こした結果によるものとみられる。

「形成初期の惑星系は、衝突やニアミスが多く、いわば交通整理がされていない状態です。たとえば月も、生まれて間もない地球に火星サイズの惑星がぶつかって飛び散った物質からできたと考えられています。このWASP-17bも、ニアミスによって公転方向が変わったのかも知れません」とAnderson氏。

同じくキール大学のCoel Hellier教授は「2つの星が同じ軌道上にいるのは英国を2人の王が治めるようなものだ、というシェイクスピアのせりふがあるんですが、まさしくその通りでしたね」()と話す。

WASP-17bが最初に目をひいたのはその大きさだ。質量は木星の半分にすぎないのに対し、直径は木星の2倍近くあり、知られている中でもっとも大きい惑星である。

WASP-17bの発見は、並はずれた大きさの系外惑星の謎を解き明かしてくれる。軌道が変化する過程で極端な楕円軌道を回ることにより大きな潮汐力が働き、星の伸縮が生み出す摩擦熱により今の大きさまでふくれあがったものと思われる。「WASP-17bの密度は発泡スチロールと同じくらい、地球の70分の1にすぎません」(Hellier教授)

WASPは英国科学技術施設会議(STFC)がバックアップする、イギリスの大学を中心としたプロジェクトで、トランジット法による系外惑星探しを行っている。WASP-17bは南アフリカに設置されたカメラによって発見され、ジュネーブ天文台の質量測定により惑星であることが確認された。WASPにとっては17個目の系外惑星発見となる。

注:「ヘンリー四世・第一部」より原文 ― "Two stars keep not their motion in one sphere, Nor can one England brooke a double reign, Of Harry Percy, and the Prince of Wales." (1600年ごろの当時は惑星を「star」と呼んでいた)

ステラナビゲータ Ver.8で系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータ Ver.8では、WASP-17bが存在する方向を星図に表示させることができます。惑星の存在が確認された300個以上の恒星の位置、追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータ Ver.8をご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。