赤外線天文衛星ハーシェルの初画像

【2009年6月22日 ESA

今年5月14日に打ち上げられたESAの赤外線天文衛星「ハーシェル(Herschel)」のファーストライト画像が公開された。写されたのは渦巻が特徴的な「子持ち銀河」M51で、細かい構造までとらえられている。


(衛星ハーシェルがとらえたM51)

ハーシェルがとらえたM51。クリックで拡大(提供:ESA and the PACS Consortium)

(赤外線天文衛星スピッツァーとハーシェルがとらえたM51の画像)

スピッツァー(左)とハーシェル(右)がとらえたM51。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/SINGS, ESA and the PACS Consortium)

ハーシェルは5月14日(世界時、以下同様)に打ち上げられ、地球から約150万km離れたラグランジュ点(L2)に投入された。6月14日には冷却装置のふたがとりはずされたが、ファーストライト(最初の観測)となる予定だった。しかし、運用チームはふたを開けた直後の空き時間に観測を試みて、見事に成功。ハーシェルの性能がじゅうぶんに発揮されていることが確認された。

ハーシェルがとらえたのは、りょうけん座の方向約3500万光年の距離に位置する銀河、M51(NGC5194)。1773年にフランスの天文学者メシエが発見した天体で、初めて渦巻き構造が見つかった銀河としても有名だ。腕の先に小さな銀河(NGC5195)がくっついていることから、子持ち銀河の名前でも知られている。

右の画像の1枚目は、3つの異なる波長の赤外線でとらえたデータを重ね合わせた擬似カラー画像。おもに赤外線を放っているのは、星の材料となるガスやちり。青は生まれたての星の放射で暖められたちり、赤は低温のちりに相当する。

2枚目は、NASAの赤外線天文衛星スピッツァー(左)とハーシェル(右)の両望遠鏡がそれぞれ同じ波長でとらえたM51。口径3.5mを誇るハーシェルの画像には、スピッツァーの画像には見られない構造が鮮明にとらえられている。

ハーシェルは機体全体を液体ヘリウムで超低温に保つなど、精密に制御された環境で観測を実施する。今後数か月間は動作確認に費やされ、本格的な運用開始は秋ごろとなる予定。