西山さん椛島さんが発見の天体、公開天文台の活躍で新星と判明

【2009年5月8日 VSOLJニュース(213)】

福岡県の西山浩一さんと佐賀県の椛島冨士夫さんが、4月21.681日(世界時)に撮影した画像に見慣れない天体を発見された。当初は星表にある既知の天体と思われたが、その後ぐんま天文台の衣笠健三さんが行った観測によって、新星であることが明らかとなった。西山さん椛島さんが発見された銀河系内の新星は、これで6個となった。


VSOLJニュースより

(著者:山岡均さん(九大理))

わたしたちの銀河系の中心方向である、さそり座やいて座といった領域は、星がたいへん多く存在します。星の増光を見つけても、どの星が明るくなったのか、どのような増光を起こしたのか、わかりにくいこともままあります。

この時に威力を発揮するのが、光を波長別に分ける「分光観測」です。ただでさえ暗い星の光を分けるためには、より多くの光を集めることができる大きな望遠鏡が不可欠ですが、大学や研究所の望遠鏡は観測スケジュールが決まっていることが多く、なかなか身動きがとれません。その代わり、日本では各地に公開天文台があり、機動力を活かした活躍を見せています。分光観測には高度な専門知識と装置が必要になるため、観測が可能な施設は限られていますが、いくつかの天文台では精力的に観測を行い、世界的な貢献を果たしてきています。

福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと、佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんは、4月21.681日(世界時、以下同様)に撮影した画像から、いて座に12.5等級の見なれない星を見つけました。ところが星表(星のカタログ)を調べてみたところ、この位置には、可視光では暗いけれども、赤外線ではやや明るい星があります。このような星は、変光幅の大きい赤色変光星である可能性が高いものです。

確認依頼を受けた、群馬県立ぐんま天文台の衣笠健三(きぬがさけんぞう)さんは、やはり赤色変光星かと考えたのですが、念のために4月27日に、口径1.5m望遠鏡を使って分光観測をしてみました。するとこの星は、赤色変光星の特徴を示さず、毎秒3000kmもの速度で膨張していることが判明しました。

その他の特徴も、この天体は新星爆発であることを示しています。改めて位置を測定してみたところ、星表の星とはわずかに異なる位置となりました。前述の赤外線で明るい星とは違う星が、明るくなったのかもしれません。

  赤外線で明るい星の位置(可視光の星表USNO-B1.0)
    赤経  17時44分08.478秒
    赤緯 -26度05分47.37 秒
  赤外線で明るい星の位置(赤外線の星表2MASS)
    赤経  17時44分08.47秒
    赤緯 -26度05分47.9 秒
  衣笠さんが測定した位置
    赤経  17時44分08.44秒
    赤緯 -26度05分48.7 秒
    (座標はすべて2000年分点)
    新星周辺の星図

チリで天空の自動観測を行っているASAS-3システムを調べてみると、この天体は4月19日に明るく(12.4等)見えており、22日と25日には暗くなっていくところがとらえられています。その前後、4月16日と30日には、写る限界(14.0等ほど)以下であったようです。現在ではさらに暗くなったものと思われ、新星のなかでも急激に変化するタイプのものだと推定されます。

平凡な変光星と即断せず、確認観測を行った公開天文台の方の尽力と慧眼は、たいへん立派なものといえるでしょう。


いて座の新星の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。

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