90億年前に現在と変わらぬ「早熟」銀河

【2009年4月14日 すばる望遠鏡

現在の宇宙に存在する巨大銀河は、長い時間をかけて合体をくり返し、現在の規模にまで成長したというのが現在もっとも一般的な説だ。しかし、すばる望遠鏡による観測で、90億年前の宇宙にも現在と同規模の巨大銀河が見つかった。


(銀河団XMMU J2235.3-2557の赤外線画像)

すばる望遠鏡が赤外線でとらえた銀河団XMMU J2235.3-2557。緑の輪郭線は、ESAのX線観測衛星XMM-NewtonがとらえたX線の強度。クリックで拡大(提供:国立天文台)

(宇宙年齢と銀河質量の関係)

宇宙年齢と銀河の規模の関係。横軸の数値(上)は天体までの距離(10億年単位)で、どれだけ昔の銀河を見ているかを表す。縦軸はその時代でもっとも規模の大きな銀河の質量(対数表示)で、黒が理論値、赤が観測値。クリックで拡大(提供:国立天文台)

ビッグバンから137億年経過した現在の宇宙には、太陽1兆個分もの質量を持つ巨大銀河が存在する。こうした銀河は、質量の小さな銀河どうしが衝突と合体をくり返して成長した結果誕生したと考えられている。

ところが、英・リバプールジョンムーア大学などの研究者からなるチームは、すばる望遠鏡を使った観測で、90億年前の宇宙にも現在に匹敵する規模の銀河が存在することを突きとめた。

同大学教授のChris Collins氏は「スーパーコンピュータのシミュレーションによると、これだけ若い銀河の質量はせいぜい(現在の)20パーセントしかないはずです。銀河の形成は予想以上に急速なプロセスであり、私たちはこれまで何か重要なものを見落としてきたのかも知れません」と話す。

1つの可能性としては、宇宙初期にすでに大規模な物質の雲が存在し、それが集積して銀河になったというシナリオが挙げられる。

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