衛星エンケラドスの噴出口をピンポイント撮影

【2008年8月18日 JPL News Releases

NASAの土星探査機カッシーニが、土星の衛星エンケラドスに接近通過し、水の氷の結晶などを噴き出す噴出口をピンポイントで撮影することに成功した。カッシーニがとらえた鮮明な画像やデータの分析から、液体の水のありかが明らかになるかもしれない。


(大きなひび割れが存在するエンケラドスの南極をとらえた画像)

大きなひび割れが存在するエンケラドスの南極。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

(Damascus Sculcusと呼ばれるひび割れの画像)

Damascus Sculcusと呼ばれるひび割れ。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

これまでに土星の衛星エンケラドスには、カッシーニによる観測で平行に走るひび割れ(通称タイガーストライプ(虎縞))が南極に発見されており、水の氷の結晶が存在することや有機物が噴出していることも明らかとなっている。また、昨年10月には噴出口8つの正確な位置が特定された。エンケラドスの噴出口には、地球の火山口に溶岩がたまっているように液体の水があると考えられており、カッシーニによる次なる観測の機会が待たれていた。

8月11日、カッシーニは時速6万4000kmという高速でエンケラドスに接近通過した。カッシーニ画像チームは、カッシーニを回転させることでエンケラドスとの間に生じる相対速度を相殺する方法で、噴出口の超鮮明な画像の撮影に成功した。

撮影について、カッシーニの画像チームの責任者の一人である米・コーネル大学のPaul Helfenstein氏は、「速度を上げて走る車の窓から望遠レンズを使って、遠く離れた広告看板を写真におさめるような作業でした」と例えている。

見事成功を収めた撮影によって、エンケラドスのひび割れは奥行き約300m、内部は「V」の字型の壁になっていることが明らかとなった。また、割れ目の両側に細かな物質が広く堆積していること、周辺には、大きさが数十m以上の氷の塊が散らばっていることもわかった。

さらに、いくつかのひび割れでは、噴出が起きていない部分にも氷の粒が降り注いだような跡が広がっていた。

このような特徴について画像チームは次のように考えている。狭い通り道から噴き上がった温かい水蒸気が、冷たい地表で氷となり、噴出口をふさぐ。その影響で同じ割れ目の別の場所から、新たな噴出が起きるのではないかというのだ。

研究者は現在、噴出の性質や強さ、周辺の地形への影響などを調べている。カッシーニが得た鮮明な画像と観測データから、エンケラドスの地質活動のエネルギー源は何か、地下のどこに液体の水が存在するのか、といった疑問に答えが出るかもしれない。