ハッブルがとらえた銀河の押し合いへし合い

【2008年6月25日 HubbleSite

NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)がとらえた、かみのけ座銀河団の画像が公開された。ここは宇宙の中でもとくに銀河の密度が高い領域で、衝突のなれの果てや、接近の跡を残す銀河などが多く見られる。


(かみのけ座銀河団の画像)

かみのけ座銀河団(Abell 1656)。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA))

(かみのけ座銀河団に存在する渦巻き銀河IC 4040の画像)

かみのけ座銀河団に存在する渦巻き銀河IC 4040の画像(上の画像を一部拡大したもの)。クリックで拡大(提供:同上)

かみのけ座銀河団(別名Abell 1656)は約3億光年の距離にあり、その名のとおり、かみのけ座に位置する。ここは天の川からもっとも離れていて、われわれの銀河自体の星間物質に邪魔されずに遠くを見通せる方向だ。

ここには何千個もの銀河が、直径2000万光年以上の球形に集まっている。HSTは、中心から3分の1ほど離れた、差し渡し数百万光年の領域を撮影した(右上)。

われわれ天の川銀河のような渦巻銀河は銀河団の周縁部にいくつか見られるものの、中心部にあるのはほとんどが楕円銀河である。楕円銀河は、銀河どうしの衝突で形成されると考えられるが、渦巻銀河に比べると年老いた恒星が多く新たな恒星の誕生が少ないことが特徴だ。天の川銀河も、30億年後にはアンドロメダ座大銀河(M31)と衝突し、やがて1個の楕円銀河へ姿を変えてゆくと推測されている。

このほかに、かみのけ座銀河団には多数の矮小銀河(星の数がひじょうに少ない銀河)も確認されている。HSTがとらえた領域中、渦巻銀河だと確認できるのは左側の青白い銀河だけで、残りは楕円銀河か矮小銀河、またはかみのけ座銀河団のさらに向こうに位置する銀河だ。

その渦巻銀河(IC 4040)を拡大した画像(右下)では、ちりを多く含む腕が、円盤全体に対して赤っぽく浮かび上がって見える。おそらく、過去に接近したほかの銀河によってかき乱されたのだろう。

かみのけ座銀河団が3億光年も離れていると言っても、これは銀河団としては「われわれの近傍」に類する。こうした近傍銀河団を一斉に観測することは、銀河の形成と進化を研究し、さらに周辺環境や年代の異なる銀河を比較する上で役立つと期待されている。