ハッブル宇宙望遠鏡が明かす、矮小銀河の本当の年齢

【2007年10月31日 HubbleSite

NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)による観測で、宇宙でもっとも若い銀河の1つと考えられていた「I Zwicky 18」が、実は周辺の銀河と同じ年齢の、じゅうぶん成長した銀河である可能性が示された。


(HSTが撮影したI Zwicky 18と伴銀河 I Zw 18)

HSTが撮影したI Zwicky 18と伴銀河 I Zw 18。画像中、I Zwicky 18の中心に見られる青白い2つの塊では、爆発的な星の形成が進んでいる。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and A. Aloisi (Space Telescope Science Institute and European Space Agency, Baltimore, Md.))

「I Zwicky 18」は、おおぐま座の方向にある、天の川銀河よりも小さい矮小不規則銀河だ。40年前に行われた観測で、われわれに比較的近い距離にありながら、初期宇宙にしか見られない銀河とよく似た若々しい姿が初めて明らかにされた。

通常、初期宇宙に存在する若い銀河を調べるための観測は、遠い距離に阻まれて容易ではない。それに比べ、この銀河はずっと観測をしやすい距離にあったため、銀河の進化を知るための観測対象として、研究者の興味をひいた。

しかし、2005年と2006年に行われたHSTによる観測で、この銀河に、少なくとも10億歳から最大で100億歳と思われる複数の星が発見された。つまり、銀河は決して若いわけではなく、周辺の銀河とほぼ同じ年齢であることが示されたのだ。

NASAの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)とヨーロッパ宇宙機関(ESA)の研究者で、I Zwicky 18の研究チームを率いたAlessandra Aloisi氏は、「一時期考えられていたような若い年齢ではないとしても、この銀河は進化上なんらかの問題をもっており、近傍宇宙では特異な存在といえます」と話している。

また、HSTは、初めてI Zwicky 18にセファイド変光星の存在を確認し、その観測を行った。セファイド変光星の周期は絶対等級に直接関係しており、周期と光度の関係から距離を知ることができる。HSTのデータによって、I Zwicky 18までの距離が5900万光年であり、今まで考えられていた距離より、約1000万光年ほど遠いことも示された。

さらに、地上から行われたスペクトル観測では、I Zwicky 18を構成している物質のほとんどが、水素とヘリウムであることが明らかとなった。いずれもビッグバンで形成されたと考えられる主な物質である。

このような原始的な物質の存在は、I Zwicky18内で形成された星の数が同じ年齢にある他の銀河に比べてひじょうに少ないことを物語っている。I Zwicky18は、すでにNASAのスピッツァー宇宙望遠鏡やチャンドラX線観測衛星などの複数の望遠鏡によって観測されている。しかし、なぜ過去に形成された星の数がこれほど少なかったのかについては、よくわかっていない。また、現在観測されている爆発的な星の形成については、伴銀河との相互作用が原因にあげられているが、詳細はまだ明らかになっていない。

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