ベテルギウスの減光

【2007年10月29日 アストロアーツ】

秋も本番になり、夜がふけると冬の星座であるオリオン座が東の空から昇るようになってきた。その右肩に赤く輝く1等星ベテルギウスは、全天でもっとも明るい変光星の1つ。現在急激に減光していて、肉眼でも変化が追える状態だ。


文:滋賀県ダイニックアストロパーク天究館 高橋進さん

(最近のベテルギウスの光度曲線)

図1:最近のベテルギウスの光度曲線(VSOLJメーリングリストデータより)。クリックで拡大(提供:高橋進氏(ダイニックアストロパーク天究館))

(20年間のベテルギウスの光度曲線)

図2:20年間のベテルギウスの光度曲線。クリックで拡大(提供:高橋進氏(ダイニックアストロパーク天究館))

オリオン座の右肩に輝く1等星ベテルギウスは半規則型変光星ですが、この9月頃から急速に暗くなっている様子が多くの観測者によりとらえられています。10月20日現在ではおよそ1.0等で、目でみてもはっきりとその暗さは確認できます。(図1参照)

ベテルギウスは半規則型(SemiRegular型:SR型)と分類される変光星です。赤色超巨星の変光星というと、ミラ型、半規則型、不規則型などがあります。ミラ型は変光範囲が2.5等以上で周期性のよい変光星です。周期は80日から1000日くらいまでですが、300日前後のものが多いです。一方で半規則型変光星はその特長によってSRa、SRb、SRc、SRdに分けられます。

  • SRaは周期35日以上で変光幅2.5等以上、周期性はいいのですが、ミラ型とくらべると変光幅は小さいです。スペクトル型がM、C、Sなどの巨星です。
  • SRbは周期20日以上、変光幅2.5等以下です。SRaに比べると周期性は弱く、変光幅が小さい、各サイクルによって変光の幅や明るさが変わることなどが特徴です。SRaと同じくスペクトル型M、C、Sなどの巨星です。
  • SRcは絶対等級の明るい超巨星ですが、変光幅は小さく、周期性が悪いうえに時には変光がわからなくなることもあります。
  • SRdはスペクトル型がFからKの黄色の巨星または超巨星で、周期性はあまりよくありません。

ベテルギウスはこのうちのSRcの半規則型変光星で、変光星カタログでは変光範囲0.4〜1.3等、周期2070日となっています。変光星であることは1836年にジョン・ハーシェルによって発見されたようですが、年によってかなり変光の様子が異なり、ほとんど変光のわからない時期もあったようです。一方で1839年や1852年などには「カペラとほぼ等しい明るさ」との報告もあります。

この20年間のベテルギウスの光度変化についてVSNET、VSOLJ(日本変光星観測者連盟)、AAVSO(アメリカ変光星観測者協会)、BAA(イギリス天文協会)などのデータを参照して作った光度曲線が図2です。これを見ると1989年から1993年あたりについてはおよそ4年ほどの周期の変光も見られますが、最近はおよそ400日ほどの周期での変光が顕著に見られます。10月も末になりオリオン座も見やすい時期になってきました。ここ20年間の光度曲線を見ていただいても最近はベテルギウスの変光を楽しむ最適な時期なのかもしれません。すでにかなり暗くなっているベテルギウスが今後さらにどのような変光を見せてくれるか、注目していきたいところです。

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