120億光年かなたに、ちりに包まれた明るい銀河を発見

【2007年8月23日 CfA Press Release

120億光年かなたに、ひじょうに明るい銀河が複数見つかった。これらの銀河では、天の川銀河の1000倍という、爆発的な勢いで星の形成が進んでいる。可視光では、その姿は大量のちりやガスに邪魔されて見ることができない。電波の一種、サブミリ波による観測でその姿が明らかとなった。


(観測された遠方銀河の画像)

サブミリ波で明るく輝く遠方銀河(クリックで拡大)
【左】JCMTのAzTECカメラによる発見画像(提供:UMass Amherst)
【中央】同視野をSMAが高解像度で撮影。光源1つだけ見える(提供:Harvard-Smithsonian CfA)
【右】同視野をHSTが撮影。可視光では見えない(提供:COSMOS/ACS Team)

われわれから120億光年かなたの宇宙を見れば、誕生してから約20億年という若いころの宇宙の姿がわかる。そのような遠方にある銀河のほとんどは、たいてい小さくて暗い。銀河が大きく成長するには、それなりの時間を必要とするからだ。しかし、発見された銀河は、とても明るく巨大だった。

研究成果を発表したチームの一人、米国ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)のGiovanni Fazio氏は「初期の宇宙に、このような巨大で明るい銀河が発見されるとは、驚きです」と話している。

銀河を最初に見つけたのは、米国ハワイ・マウナケア山のジェームズ・クラーク・マックスウェル望遠鏡(JCMT)。電波の中でも赤外線に近い波長の「サブミリ波」を観測する望遠鏡だ。

研究チームは、JCMTに搭載されたAzTECカメラがとらえた数百の天体から明るいものを7つ選び、さらに詳しく調べた。天体はとても明るかったので複数の銀河の集まりとも考えられたが、CfAのサブミリ波干渉計で観測した結果、7つの天体はそれぞれ単独の銀河だと確かめられた。

また、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影した可視光画像には銀河はほとんど写っていなかった。可視光を通さない厚いちりが銀河を包んでいるらしい。一方、赤外線天文衛星スピッツァーには銀河からの赤外線が届いていた。

さまざまな観測結果から、7つの銀河のうち5つが、われわれからおよそ120億光年離れていることがわかった。赤外線で明るく輝いていることは、星が爆発的に形成されていることを示唆している。これは銀河どうしの衝突と合体の結果かもしれない。また、光源がコンパクトであることから、銀河の中でクエーサー(解説参照)が形成されつつある可能性も指摘されている。

クエーサー

ひじょうに遠方にあって通常の銀河数十個分のエネルギーを放出していると考えられている「クエーサー」と呼ばれる天体がある。観測されているクエーサーはもっとも近くても8億光年かなたにある。正体は今もって謎だが、大質量ブラックホールをエネルギー源としているとする説が有力だ。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.92 クエーサーって何? より一部抜粋 [実際の紙面をご覧になれます])

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