推定年齢132億歳の恒星、天の川銀河に発見

【2007年5月16日 ESO Press Releases

天の川銀河に132億歳の星が存在するという研究が発表された。年齢がわかっているものとしてはもっとも高齢で、事実だとすればビッグバンからたった5億年後に誕生したことになる。われわれの天の川銀河も、そのころに形成されたのかもしれない。


(放射性元素による星の年代測定の概念図)

放射性元素による星の年代測定の概念図。グラフは、恒星が誕生してから放射性元素が減っていくようすを表す。クリックで拡大(提供:ESO

ヨーロッパ南天天文台(ESO)の天文学者などからなる研究チームによれば、われわれの天の川銀河に存在する恒星HE 1523-0901の年齢は132億歳前後である。46億歳という太陽の年齢に比べるとはるかに高齢で、現在求められている宇宙の年齢「137億年」に匹敵する。宇宙の歴史が始まったころからの貴重な生き残りだ。

天文学者たちが星の年齢を測定した方法は、考古学者がよく使う手段に近い。

考古学では、資料に含まれる「炭素14」の割合からその年代を求める。炭素14は自然界の炭素にごくわずかな割合で含まれており、ある程度時間が経過すると放射線を出して別の元素に変わってしまう。こうした元素は「放射性元素」と呼ばれているが、別の元素に変わるまでの時間スケールを「半減期」で表すことができる。半減期とは、一定量の放射性元素のうち半分が変化してしまうまでの時間で、炭素14の場合はおよそ6千年。生きた植物に含まれる炭素14の量は一定で、死んだ時点から減っていくことから、木材などに含まれる炭素14の割合を測れば、その年代が逆算できるのだ。

もっとも、「炭素14」で測定できるのはせいぜい数万年。100億年を超える年代測定ともなれば、半減期がとてつもなく長い放射性元素を選ばなければ意味がなく、候補は2つに絞られる。トリウム232(半減期140億年)やウラン238(44.7億年)だ。どちらもひじょうに重い元素で、ばく大なエネルギー放出をともなう超新星爆発でなければ作られない。研究グループはこのほかに、オスミウムやイリジウムといった、やはり超新星爆発でなければ作られないが、放射性ではない元素も測定した。トリウム232とウラン238がこれらの元素に比べて少なければ少ないほど、その恒星は高齢であると言えるはずだ。

トリウムやウラン、そして比較に使った元素はどれも、水素やヘリウムといった恒星の主原料に比べれば、ひじょうに存在量が少ない。そのため観測は困難を極めた。HE 1523-0901は例外的にウランなどの割合が多く、年代を測定できる数少ない恒星である。

「132億歳」という結果にも、前後20億年の誤差があると研究グループは考える。精度をあげるためには、HE 1523-0901のような恒星をもっと見つけなければならない。ただ、今回の結果が最新の観測に基づく宇宙年齢と矛盾しないこと、HE 1523-0901を含む銀河系が確かに100億年以上前には形成されていたことがわかっただけでも成果が上がったと言えよう。