液体の水、そして生命が存在する可能性も―
地球にとても「近い」系外惑星、発見

【2007年4月26日 ESO Science Release

仮に「宇宙人探し」のために探査機を派遣するとしたら、この天体が最有力候補の系外惑星となるかもしれない。これまで太陽以外の恒星に見つかった中でもっとも地球に近いサイズで、恒星からの距離も液体の水が存在しうる範囲で、その上われわれからの距離も近い惑星が見つかった。


(Gliese 581系の想像図)

赤色矮星Gliese 581と3つの惑星の想像図。手前がGliese 581 c。クリックで拡大(提供:ESO)

(恒星HO Libの位置、ステラナビゲータVer.8で表示)

Gliese 581 cが存在する恒星HO Libの位置。惑星が見つかっているほかの恒星も表示している。クリックで拡大(ステラナビゲータVer.8で作成)

10年を超える太陽系外惑星発見の歴史は、地球からあまりにかけ離れた世界との出会いの繰り返しでもあった。観測能力の限界から、検出できる系外惑星は地球に比べてはるかに重いものばかり。また、恒星のすぐ近くを周り超高温状態の惑星が多い。木星のように巨大なガス惑星で、恒星のすぐ近くを公転しているものを「ホット・ジュピター(熱い木星型惑星)」と呼ぶが、かなりの系外惑星がこれにあてはまる。

しかし、この2、3年の間に大きな動きがあった。木星(質量が地球の300倍以上)に比べてはるかに地球に近い(20倍未満)惑星が次々と見つかっているのだ。太陽系で言えば天王星(約15倍)や海王星(約17倍)に近い。それでもまだ「地球同然」とは言えないが、主成分が気体(水素などのガス)ではなく固体(氷や岩石)と推測されることから「スーパー・アース(大きな地球型惑星)」と呼ばれることもある。

発見の大半をもたらしているのは、「HARPS」と呼ばれる装置だ。12か国による共同研究機関、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が運営するラ・シーヤ天文台3.6メートル望遠鏡に備え付けられた分光器である。

太陽系の外にある惑星を直接見ることは今のところ難しい。だが、惑星が公転していると、恒星の方も重力で引っ張られ、微小ながら規則正しい「ぶれ」が生じる。すると恒星のスペクトルに変化が見られるので、これを検出することで系外惑星を発見できる。必然的に、惑星が軽いほど恒星に生じる変化は小さいが、HARPSはこの変化を世界最高の精度で検出できる装置なのだ。

HARPSの活躍で、10個近いスーパー・アースが見つかっているが、どれも恒星に近い灼熱の環境か、遠くて凍りついた環境にある。だが、ついに「ちょうどよい」、つまり、地球のように水が液体として存在しうる位置のスーパー・アースが発見された。

スイス、フランス、ポルトガルの天文学者からなる研究チームの発表によると、てんびん座の方向20.5光年の距離にある恒星Gliese 581には、地球の約5倍の質量と1.5倍の半径を持ち、13日でGliese 581の周りを1周する惑星「Gliese 581 c」が存在する。なお、恒星Gliese 581にはさらに2つの惑星が見つかっているが、詳細は下の表を参照のこと。

公転周期の短さからわかるように、地球と比べて恒星までの距離はかなり近い。しかし、Gliese 581の質量は太陽のわずか3分の1で、はるかに暗い。そのため惑星Gliese 581 cの平均気温は摂氏0〜40度ほどと見積もられている。もし、実際に表面の温度がこの範囲内であれば、水は液体として存在し、さらに、生命が存在する可能性もでてくる。

Gliese 581のように小さな恒星は、表面温度が低く赤い色をしているため「赤色矮星(せきしょくわいせい)」と呼ばれる。銀河系の恒星で、一番数が多いとされる種族だ。実は、スーパー・アースの多くは赤色矮星で見つかっているので、地球のような惑星を探す恒星の候補として有力視されている。

Gliese 581 cは地球に似ているだけではない。恒星Gliese 581までの距離20.5光年というのは、地球に近い恒星の上位100個に入る。研究チームの一人、仏・グルノーブル大学のXavier Delfosse氏はこう語る。

「その温度と距離を考えれば、地球外生命体を探す将来の探査計画では、この惑星がとても重要なターゲットになると思いますよ。宇宙の地図があったとしたら、この惑星に(お宝のありかを示す)×印をつけたいところですね」

Gliese 581の惑星のデータ
惑星名 質量(倍) 公転周期(日) 公転距離(AU) 備考
Gliese 581 b 15.6 5.37 0.041 同じチームが2年前に発見
Gliese 581 c 5.06 12.9 0.073 今回発見、液体の水の可能性
Gliese 581 d 8.3 83.4 0.25 今回発見

研究チームが発表した論文(pdf形式)にもとづく。質量は、見積もられる最低値を地球の質量で割った数値。1AU(天文単位)は、地球と太陽の平均距離

ステラナビゲータVer.8で系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータVer.8では、Gliese 581 cが存在する方向を星図に表示させることができます。200個近くにのぼる、惑星の存在が確認された恒星を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータ Ver.8をご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。

なお、惑星Gliese 581 cが存在する恒星には「Gliese 581」だけではなく、さまざまな呼び方があります。「コンテンツ・ライブラリ」からダウンロードできるデータには、「HO Lib」として登録されています。

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