板垣さん、自身が発見した超新星SN2006jcを2004年にも見ていた

【2007年4月9日 UC Berkeley NewsChandra Press RoomNASA Goddard press release

2004年に山形県の板垣公一さんが発見した増光天体は超新星ではなかったが、その後再び板垣さんによって発見された超新星SN2006jcと同一であることが明らかとなった。増光した天体が、その後超新星爆発を起こした例は初めてのことで、恒星進化の理論に大きな疑問が投げかけられることとなった。


(X線で見たSN2006jc)

X線で見たSN2006jc。クリックで拡大(提供:NASA/Swift/S. Immler)

(紫外線で見たSN2006jc)

紫外線で見たSN2006jc。クリックで拡大(提供:NASA/Sonoma State Univ. / A.Simonnet)

2004年10月20日、板垣公一さんは超新星と見間違えるほどに増光した天体を発見した。その星が、2006年10月11日に超新星として再び観測されたることとなった。板垣公一さんは、奇しくもSN2006jcの発見者でもある。

この天体の観測と研究を行ったカリフォルニア大学バークレー校の天文学者Ryan Foley氏は「増光した後に、爆発を起こした天体は、今までに見たことがありません」と話している。

Foley氏らは、ケック10メートル望遠鏡を使い、この天体を観測した。そして、得られたスペクトル線が、2年前に放出されたガスに超新星の衝撃波が追いついて突入した証拠であると指摘した。また、別のグループがNASAのガンマ線天文衛星スウィフトとX線天文衛星チャンドラで観測し、同様の結論に至っている。さらに、両衛星の観測から、このとき放出されたガスの量は、太陽の100分の1(または木星の10倍)に相当すると見積もられた。

さらに、衝撃波が2年前に放出されたガスに到達するまでに、たった数週間しかかからなかったことがわかった。また、衝撃波がガスを数百万度にまで熱し、そこからX線が100日間放出されるのをスウィフトは観測し続けた。これはいままでに例のないことで、過去のX線観測では、超新星はすぐに暗くなり見えなくなってしまっていた。

Foley氏らはこの天体について、高光度青色変光星(LBV)という極端に質量と光度の大きい天体がウォルフ・ライエ星へと変化したのではないかと考えている。LBVは質量が大きいために、進化の過程でひじょうに不安定となる。そして、2004年の増光に見られるように、LBVは大量の質量を吹き飛ばしとても明るくなることがある。この現象は、「にせ超新星」(Supernova Impostors)と呼ばれている。

現在の理論では、大質量星が大きく増光直後に爆発することも、そしてウォルフ・ライエ星が明るい超新星爆発を起こすことも考えにくく、恒星の進化に関するモデルの見直しが迫られることになりそうだ。

ウォルフ・ライエ星

輝線星の一種。1867年にパリ天文台のウォルフとライエによって発見された。スペクトル上に表れるヘリウム、酸素、窒素、炭素などの電離イオンが放射する幅の広い輝線が特徴で、そこから恒星大気が恒星風として高速度で流出し、大量の質量が失われていることが読み取れる。発見数300個程度の特異な星である。(「最新デジタル宇宙大百科」より)