チャンドラとハッブルがとらえた木星のオーロラ

【2007年3月14日 Chandra Photo AlbumHubbleSite NewsCenter

海王星以遠天体探査機ニューホライズンズの木星スイングバイに合わせて、NASAのX線天文衛星チャンドラとハッブル宇宙望遠鏡が木星を観測した。その画像には、X線や紫外線で輝く木星のオーロラがとらえられている。


X線天文衛星チャンドラとハッブル宇宙望遠鏡による木星の合成画像

X線天文衛星チャンドラとハッブル宇宙望遠鏡による木星の合成画像。クリックで拡大(提供:X-ray: NASA/CXC/SwRI/R.Gladstone et al.; Optical: NASA/ESA/Hubble Heritage (AURA/STScI))

ハッブル宇宙望遠鏡による木星の画像

ハッブル宇宙望遠鏡による木星の画像。クリックで拡大(提供:NASA/ESA, and John Clarke (Boston University))

X線天文衛星チャンドラは、ニューホライズンズの木星スイングバイ以前の2月8日、10日、24日に木星の観測を行った。1枚目の画像は、その際チャンドラが撮影したものに、HSTの最新の画像を合成したものだ。木星の南北両方の極に、X線で輝くオーロラが見えている。

2枚目の画像は、HSTが2月17日から21日にかけて掃天観測用高性能カメラ(ACS)でとらえたもの。画像中、四角で囲まれている部分には、紫外線波長でとらえたオーロラが写っている。

木星のオーロラには、衛星の1つ・イオが関与している。イオの活火山は酸素や硫黄のイオン(電気を帯びた粒子)を吹き出し、木星の磁気圏を満たしている。イオンは磁力線に乗って木星の北極や南極に集まり、太陽風と衝突することでオーロラが発生するのだ。

一方、木星の磁気圏全体は太陽風に押され、太陽と反対の方向へ「しっぽ」のように伸びている。イオンの多くは「しっぽ」に沿って移動し、徐々に流出するとされている。ニューホライズンズは木星を離れてからも、しっぽの中を移動し続け、イオンの濃度などを測定する予定だ。今回観測されたオーロラとともに、木星周辺における物質の移動や反応を具体的に把握する手がかりとなることが期待される。

なお、木星のオーロラのエネルギーは、地球のオーロラの1000倍も強く、その生成メカニズムの詳細を明らかにすることは、研究者の課題の一つとなっている。