超巨星の最期は爆発の連続

【2007年1月29日 Hubble newscenter

ハッブル宇宙望遠鏡などによる観測で、太陽の30倍以上も重い恒星が吹き出すガスのようすが明らかにされた。超巨星の太く短い生涯の果てには超新星爆発が待っているが、その直前の段階も、表面で爆発的な噴出を繰り返す激しいものであるらしい。


VY CMa、可視光および偏光疑似色の画像

HSTが撮影したおおいぬ座VY周囲の物質の分布。左は可視光で撮影されたガスのようす。右は偏光フィルターで撮影したちりの3次元分布の疑似色画像。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and R. Humphreys (University of Minnesota))

われわれから5000光年の距離にある「おおいぬ座VY星(VY CMa)」は、太陽の30倍から40倍もの質量を持ち50万倍も明るく輝く超巨星だ。半径も並はずれて大きく、この星を太陽と入れ替えた場合、地球はおろか、はるか外側の土星までもが飲み込まれてしまう。VY CMaは100年以上前から天文学者に注目されているが、今月初めに開かれたアメリカ天文学会の総会では興味深い観測結果が発表された。

ミネソタ大学のRoberta Humphreys氏が率いる天文学者のチームは、NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)とハワイ・マウナケアにあるケック望遠鏡を使って、VY CMaの周囲に広がったガスの分布を調べた。

VY CMaは生涯の最終段階で「赤色超巨星」と呼ばれる状態にある。水素以外の元素による核融合が始まり、大きくふくれあがっているため外層からは物質が宇宙空間へとあふれ出している。この現象についてHumphreys氏は「赤色超巨星から物質が放出される過程は単純なもので、どの方向でも、どの瞬間にも一定の割合で流れ出ているだろうと考えていました」と観測前の予想を語っている。

その予想が正しければ、VY CMaから離れたガスは球状に広がっていくはずである。しかし、HSTが撮影した可視光画像(左)にはガスが集まった腕のような構造が何本も見られる。

一方、右側は偏光フィルターを使った疑似色画像だが、光の波がちりの粒子に反射すると、ばらばらだった振動が特定の方向にそろう(偏光)。決まった角度の光だけを通す偏光フィルターで撮影すれば、それに対応する位置のちりが見える。3枚の異なる角度に対応する偏光フィルターで撮影し、それぞれ赤・緑・青に着色して重ね合わせたのがこの疑似色画像で、物質が3次元的にも不均一に分布していることがわかる。

また6年間隔で撮影するなどして、物質が広がる速度も調べられたが、やはり方向によってばらばらだった。HSTの可視光画像に写っていた腕などのような構造は、それぞれが違う方向に違う速度で移動していたのである。

逆算すると、VY CMaからの物質の放出は一定ではなく、表面でときどき爆発的な噴出が起きていることがわかった。画像中一番外側に写っている構造は1000年前に吹き出したもので、内側には50年前に吹き出したと思われるかたまりもある。

典型的な「赤色超巨星」段階は50万年ほど続く。その間続く爆発的な噴出の1つ1つは、やがて起きる超新星爆発ほど派手ではないが、最終的な変化は大きい。VY CMaの場合、すでに元々あった質量の半分を失ってしまったと考えられている。

<参照>

<関連リンク>

<関連ニュース>