マーズ・リコナサンス・オービター接近完了、本格的な火星偵察開始へスタンバイ

【2006年10月2日 NASA Planetary Photojournal

今年3月に火星に到着したNASAの探査機マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)に搭載されているHiRISEカメラが、火星上空280キロメートルという過去にない低空からとらえた画像が公開された。その解像度は驚くべきもので、画像からは90センチメートル程度の大きさのものを見分けることができる。


(マーズ・リコナサンス・オービターによるイウス谷(Ius Chasma)の画像)

HiRISEカメラが撮影したイウス谷(Ius Chasma)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)

NASAの探査機マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)は、今年3月に火星に到着して以来、その高度を除々に下げてきた。11月から本格的な観測を開始する探査機は、現在火星上空280キロメートルの詳細マッピング軌道上にいる。この低空の軌道上から撮影を行うことで、高解像度を誇るHiRISEカメラは、われわれに今までに見たことにない詳細な火星の姿を見せてくれるのだ。今回公開された詳細マッピング軌道上からの初めての画像には、マリネリス峡谷の西の端にあるイウス谷(Ius Chasma)がとらえられている。

9月29日に撮影されたこの画像の解像度は、他の惑星探査機に搭載されているカメラとは比較にならないほど高く、1ピクセルあたり29.7センチメートルという細かさだ。もしここに写っている範囲内に人が立っていたなら、画像の中に写っているはずだという。

また画像からは、火星の表面がどのような変化によって現在見られるような形となったのかかを知る手がかりを得ることができる。たとえば、物質が層を成している部分を露出している岩は、おそらく過去ここに存在した水の中で堆積し形成されたものと考えられている。また、断層を見せている岩や、折り重なっているものもあり、それらはかなり広い範囲で地殻に力が加わったことか、または巨大な地すべりのようなものに起因していると考えられている。画像右側に暗い物質がまとまって見えているのは、多数の石。右側下にあるのは砂丘か、風に吹かれた砂によって造られたものだと考えられている。

10月の間は、火星はほぼ太陽の反対側に回ってしまうため、マーズ・リコナサンス・オービターの活動は最小限にとどめられる。11月からの本格的な観測活動を楽しみにしたい。


編集注:これまでアストロアーツニュースでは"Mars Reconnaissance Orbiter"の日本語表記を「マーズ・リコネイサンス・オービター」としてきましたが、以降のニュースではより英語の発音に近い「マーズ・リコナサンス・オービター」と表記いたします。ご了承ください。