ハッブル宇宙望遠鏡、系外惑星の親星を明らかに

【2006年8月15日 Hubble Newsdesk

NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)による観測で、重力マイクロレンズ効果によって2003年に発見されていた惑星の質量や軌道の大きさ、親星の質量、距離などが初めて明らかとなった。


(OGLE-2003-BLG-235L/MOA-2003-BLG-53Lの周辺の画像)

HSTが撮影したOGLE-2003-BLG-235L/MOA-2003-BLG-53Lの周辺の画像。十字の中心がOGLE-2003-BLG-235L/MOA-2003-BLG-53L、左下が拡大画像で2つの星はそれぞれ赤い十字と青い十字の中心。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, D.Bennett(University of Notre Dame), and J. Anderson(Rice University))

新しく発見された恒星は、OGLE-2003-BLG-235L/MOA-2003-BLG-53L。2003年に重力マイクロレンズ効果によって発見された惑星の親星だ。明らかとなった親星の質量は太陽の63パーセントほどで、われわれから1万9千光年の距離にある。また、惑星の質量が木星の2.6倍であることや、軌道の大きさも木星程度であることも明らかにされた。

重力マイクロレンズ効果とは、地球から見て観測の視線方向に星や惑星が一直線に並ぶとき、手前の星の重力によって、背景にある星の光が拡大される現象だ。光が拡大されることで、手前にある星を知る手がかりが得られるのである。また、手前の星の周りを回る惑星によっても、背景の星の明るさが増す。このような増光によって、通常望遠鏡では観測できないかすかな惑星の存在も明らかとなる。このように、重力マイクロレンズ効果の観測からさまざまな情報がもたらされるのだ。

この重力マイクロレンズ効果が続くのは数か月、惑星による増光は数時間から2、3日の間だ。惑星が発見されたのは2003年のこと。なぜ詳細を明らかにするのに、惑星発見からこんなにも時間がかったのだろう。実は、2つの星を即座に分離することは、HSTのシャープな観測の目をもってしても不可能だったのだ。しかし、惑星発見以降、HSTのACS(掃天観測用高性能カメラ)が活躍した。2つの天体には時とともに徐々に色の違いが現れてくるので、ACSカメラを使い赤と青のフィルターを通したデータを2年かけて記録し続けたのだ。その結果、初めて重力マイクロレンズ効果で発見された惑星とその親星の姿が明らかとなったのである。

HSTの今回の観測結果は、支持されている惑星系を形成する降着円盤モデルと一致するものだ。重力マイクロレンズ効果によって発見された惑星とその親星の詳細が明らかになったのは初めての例であったが、近い将来重力マイクロレンズ効果によって別の惑星が発見されれば、HSTの目は再びその惑星系に向けられることになるだろう。

<参照>

<関連リンク>

<関連ニュース>