変形した銀河、はじき出されて爆発した星

【2006年7月3日 ESO Press Releases

ESOVLTが珍しいところで爆発した超新星を撮影した。その場所とは、銀河が別の銀河に引っ張られて作られた「橋」の上だ。銀河どうしの接近は銀河の形を大きく変えるとともに、銀河の中の物質や恒星の運命も激変させてしまう。


(MCG-01-39-003、NGC 5917、SN 2005cfの画像)

VLTが可視光3波長と赤外線で撮影したMCG-01-39-003(右下)とNGC 5917(右上)の合成画像。両者の間にSN 2005cfがある。クリックで拡大(提供:ESO

画像右側には2つの渦巻銀河が写っている。どちらもてんびん座の方向、8700万光年のかなたにある銀河だが、上側の銀河・NGC 5917は形を保っているのに対して、下側のMCG-01-39-003は大きく変形して、渦巻というよりも細長いフックのようになっている。どうやら、MCG-01-39-003はNGC 5917の重力で引き延ばされてしまったようだ。

銀河が接近遭遇して変形することは珍しいことではない。そして、変形した銀河で星の誕生が活性化することもよく知られている。多くの星が生まれるということは、それだけ星の劇的な最期−超新星爆発も多く見られるということでもある。一般的にこのモデルでは、ひじょうに重い星が短い生涯の最期に起こす超新星爆発の方が想定される。さかんに星が生まれる領域では、それだけ重い星が生まれる割合も大きいからだ。しかしもう1つのタイプ、白色矮星に伴星からガスが流れ込んで暴発的な核融合が起きる、Ia型超新星の数も多くなることが、最近の理論で明らかになってきた。

こうしたことをふまえれば、MCG-01-39-003からNGC 5917へ伸びた(一見暗い)「橋」の中で超新星爆発が起きたのは不思議なことではない。VLTの画像には、星形成領域の可能性もある構造がいくつも見られる。とはいえ、実際に銀河どうしをつなぐ「橋」の中で超新星が見られるのはまれなので、天文学者にとっては格好の研究対象だ。SN 2005cfという符号がついた超新星は、Ia型に分類されるもので、MCG-01-39-003から伸びたフックの先端付近にあった。

興味深いのは、SN 2005cfが「橋」の中ではなくて外側で見られたことだ。この画像を撮影したチームの一人、ESOの天文学者Ferdinando Patat氏は「おそらく元々の連星系は生まれた銀河の中から引きはがされて、誕生の地からはるか遠くで爆発するにいたったのでしょう」と語る。引っ張られたり、衝突したりと、銀河もいろいろと大変だが、中の星はもっと大変だ。