真横から見た銀河円盤の姿

【2006年6月13日 HUBBLESITE Newsdesk

NASAのハッブル宇宙望遠鏡HSTが系外銀河NGC 5866の姿を捉えた。われわれはNGC 5866をほぼ真横から見ているので、ちりが集まって真っ黒に見える円盤面から透明なハローに至るまで、垂直方向の構造が断面図のように見て取れる。


(NGC 5866銀河の画像)

NGC 5866銀河。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA))

NGC 5866はりゅう座の方向、われわれから4400万光年の距離にある銀河だ。直径は6万光年で天の川銀河の3分の2しかないが、質量はほぼ同じである。

NGC 5866の形状は「S0」に分類される(解説参照)円盤銀河だ。もし円盤を正面から見たら、ほとんど腕構造のないのっぺりした姿をしているはずである。それでもこうした銀河が渦巻銀河(S)に分類されるのは、球に近い楕円銀河と違って、多くの星が平坦なディスク(円盤)に集まっているからだ。その一方で、バルジと呼ばれる中心部の構造は大きく膨らんでいるので、S0銀河には「レンズ状銀河」という別名もある。それはS0銀河を真横から見ると凸レンズのような形に見えるからだ。

HSTが撮影したNGC 5866の輪郭も、確かに横から見たレンズの形だが、まるで上下に真っ二つに割れているかのようだ。これはちりが集まっている部分が黒く見えているからである。一方、ちりと重なるように棒状の青い光があるが、これはNGC 5866のディスクの星の光だ。よく見ると、ちりの筋はまっすぐなディスクに比べて曲がっている。これは、NGC 5866が過去に別の銀河と接近したときに引っ張られた跡かもしれない。

これまでS0銀河については、他の渦巻銀河と違って、新しい恒星は生まれていないのではないかと議論されていた。星の材料となるガスとちりの雲が薄いからである。しかし、NGC 5866の外縁部では材料自体が枯渇しているが、中央に近いところではまだ星が生まれていることがわかった。横から見た円盤の表面が平らではなく、けばだっているような構造があるのがその証拠だ。円盤周辺で質量の大きな星が生まれると、周辺のガスやちりを吹き飛ばし円盤に垂直に細く伸びる構造ができるが、あまり時間がたたないうちに元どおり円盤に吸収されてしまう。したがって、今もNGC 5866では星の誕生が続いていると言えるのだ。地上の望遠鏡では、こうした細かな構造まで分解することはできなかった。

一見するとNGC 5866はひじょうに薄い銀河に思えるが、銀河にはディスクを包み込むように「ハロー」と呼ばれる領域が球状に広がっている。この画像でも、ハローの内側はぼんやり輝いて写っているが、外側はいくつかの球状星団が確認できる以外は透明だ。その透明なハローを通して、さらに遠く何億光年も先の、様々な形をした銀河を見ることができる。

ハッブルの銀河分類

1926年にハッブルが提唱した系外銀河の形態分類のこと。楕円銀河(略号E)、渦巻銀河(略号S)、棒渦巻銀河(略号SB)、不規則銀河(略号Ir)に大きく4分類し、各タイプをさらに細分化している。(「最新デジタル宇宙大百科」より抜粋)

楕円銀河(E0〜E7)━S0┳渦巻銀河(Sa〜Sc)
           ┗棒渦巻銀河(SBa〜SBc)
不規則銀河(Ir)