7年ぶりの「うるう秒」

【2005年12月9日 国立天文台 アストロ・トピックス(167)

来年の元旦に、7年ぶりに「閏(うるう)秒」が挿入されることになりました。日本時間で2006年1月1日午前8時59分59秒の次に59分60秒が挿入され、この1分間だけが61秒あることになります。

地球の自転周期はどんどん伸びていきます。かつて、精密な時計を作ることができなかった時代には、地球の自転という現象は大変精度の高い時計として利用されていました。地球の自転を一日24時間として時計代わりとして使い、星や太陽の観測をして、精度のよくない機械時計を調整し直していたのです。しかし、原子の振動周期を時間の目盛りとして使う原子時計の登場により、今度は逆に地球の自転の変化が計測可能となりました。これによって、地球の自転は一定ではなく、かなりふらふらしながら遅れつつあることがわかってきました。遅れつつある自転速度と、そのふらつきが正確に観測できるようになったのです。

一方、現在の時間の定義は、セシウムという原子を利用した原子時計で決められています。原子時計で計測すると、地球の自転の遅れははっきりとわかります。1958年の原子時計による管理を始めてから現在まで、そのずれは33秒に達しています。現在の時刻のもとになっているのは、地球の自転ではなく原子時計ですから、この両者のずれを放っておくと、いずれはそのずれがどんどん蓄積され、遠い将来には、例えば正午になっても、まだ太陽が昇ってこない、などということが想定されるのです。これでは、いわゆる市民生活を送る上での時刻という意味が失われてしまいます。そういった事態を避けるために、しばしば原子時計と、地球の自転とをあわせ直す必要があるわけです。その調整のために、原子時計の時刻系に1秒を適宜加える(または除く)のが閏秒です。閏秒の実施により、原子時計の秒を規準にした時刻系(協定世界時)と市民生活に用いる時刻系(平均太陽時)との差が常に±0.9秒以内にあるように管理しています。

閏秒は、これまでは世界時の6月か12月の最終日の最終秒のところで1秒余分に加えることで挿入されてきました。日本時間は世界時に対して、9時間すすんでいるため、7月1日と1月1日の午前9時の直前に挿入されます。今年の世界時12月31日の最終秒、つまり日本時2006年1月1日には、1999年以来、実に7年ぶりに 閏秒が挿入されることになったのです(国立天文台・天文ニュース (246))。

通常は午前8時59分59秒の1秒後が午前9時になるはずですが、閏秒を挿入することで午前8時59分60秒が入り、その1秒後が午前9時になります。時計を秒まで正確に合わせている人は、あわせ直す必要がありますね。

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