宇宙で一番最初の天体からの光を検出?

【2005年11月9日 Spitzer Space Telescope Newsroom

NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡で観測を行ったチームが、130億光年以上前の、宇宙最初期の天体からの光をとらえたと発表した。もし事実ならば、初めて作られた恒星の輝きか、初めて生まれたブラックホールにガスが吸い込まれる時に発する電磁波を見るのに成功したことになる。

りゅう座の恒星や銀河と背景の光

上 : りゅう座に存在する恒星や銀河を捉えた画像、下 : 恒星や銀河などを塗りつぶしたもの。背景に残った明るい赤外線放射は手前にある銀河や恒星の光ではないことがわかる。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/A. Kashlinsky (GSFC))

スピッツァー宇宙望遠鏡は、10時間にわたり、りゅう座の方向を赤外線で観測した。そこには、われわれが見慣れた星や銀河が数多くある。これらの星は、若い「種族I」と、年老いた「種族II」に分けられるが、いずれにせよ宇宙が誕生して数十億年以上たってから生まれた星たちだ。研究グループは、こうした星や銀河をすべて取り除いてみた。すると、そこには赤外線で輝くかたまりのようなものが見えてきた。これが、「種族III」の星からきた光かもしれないとグループのメンバーは主張している。「種族III」とは、いまだ観測されたことのない、宇宙で最初に生まれた恒星たちにつけられた仮想のグループ名だ。

理論によれば、種族IIIの星は太陽の100倍以上の質量で、逆に寿命はわずか数100万年と極端に短かった。従って「現在」種族IIIの恒星は存在しないが、その光は100億年以上かけて地球に届く可能性がある。その場合、星から出た紫外線は赤方偏移によって赤外線として観測される。

宇宙背景放射探査衛星COBEは、光源不明の赤外線背景放射を「観測しているし、その後継機WMAPの観測からは、種族IIIの恒星は(137億年前と推定される)ビッグバン、つまり宇宙の誕生から2〜4億年後に生まれたと推定されている。今回の観測はこれらと一致する。

130億光年以上離れた天体を見ているのだから、観測が困難なのも事実。グループのメンバーは「飛行機から遠くの街の輝きを見るかのよう」と形容している。スピッツァーの性能を、設計当時の想定精度以上に引き出すために、近くの星や銀河の光を取り除くなどあらゆる工夫がなされた。それでもなお、光を個々の天体に分離することはできなかった。しかし、次世代の宇宙望遠鏡ならそれも可能だろうというのが研究グループの見方だ。


ビッグバン宇宙モデル : 「宇宙は、かつてすべてが凝縮された超高温・超高圧の状態から爆発的に膨張して今日のような姿になっている」とする宇宙論モデルのこと。1948年、ロシア生まれのアメリカ人ガモフによって発表された。宇宙開闢時の火の玉宇宙の名残である3K宇宙背景放射(ガモフは7Kと予言)が1965年に発見され、今日の標準的宇宙論モデルとして広く支持されるようになった。ビッグバンの名は、この説に懐疑的な定常宇宙論者であるホイルが揶揄(やゆ)して「ビッグバン」と呼んだのに由来している。 (「最新デジタル宇宙大百科」より)