FMラジオのアンテナで、地球に飛び込む宇宙線の様子を探る

【2005年6月3日 MPIFR Press Release

FMラジオのアンテナに近い実験装置を使って、太陽が放つ電波の千倍もの強度の電波フラッシュが観測された。この電波フラッシュは、極めて高いエネルギーを持つ宇宙線が地球大気に突入したときに放たれるものである。

(LOPESの捉えた電波フラッシュ)

LOPESの捉えた電波フラッシュ(色は、疑似カラー)。クリックで拡大。(提供:MPIFR)

観測されたフラッシュは、今までで最も強く、最も短い電波フラッシュだ。この現象は、宇宙空間を旅してきた、極めて高いエネルギーを持つ原子以下の粒子(超高エネルギー宇宙線)が地球の大気に衝突することで起きる。太陽の放つ電波よりも千倍明るく、持続時間が雷の100万分の1程度と極めて短いこのフラッシュによって、月の直径の2倍ほどの範囲が電波で「輝いた」。その強さはラジオやテレビ放送に使われる電波をもしのぐが、20〜30ナノ秒という短さである上に、それほど強力な電波フラッシュは一日に一回程度しか発生しないので、日常生活の中で気づくことはないだろう。

今回の観測に使われた装置LOPES(LOFAR Prototype Experimental Station)は、2006年に建設予定の次世代電波望遠鏡LOFAR(Low Frequency Array)に組み込まれる装置の実験機だ。基本的な原理はFMラジオのアンテナと変わらない。しかしこの簡単な装置が計測した電波フラッシュの強さからは、超高エネルギー宇宙線の持っていたエネルギーという貴重なデータが得られる。このことは専門家も驚かせた。

長年観測が難しいとされ、研究が停滞していた超高エネルギー宇宙線に対する理解は、この装置の登場で今後大きく深まるかもしれない。LOPESはLOFARのプロトタイプだが、LOFARは従来のような単一のパラポラアンテナではない。いくつもの電波観測装置を回線でつなぎ、統合して解析することでデータを得るという画期的な装置で、気象から深宇宙に至るまであらゆる観測を予定している。今回の観測の成功で、LOFARに対する期待はますます高まっている。

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