日本天文学会2004年春季年会が開催

【2004年3月26日 アストロアーツ】

3月21日名古屋で行われた「日本天文学会」(2004年春季年会)記者会見にて、2003年度第8回日本天文学会林忠四郎受賞者が発表された。受賞研究内容は、新星の滅光の速さの違いに関する計算方法の開発と連星系進化についての理論再構築だ。また、おとめ座銀河団のまわりにバリオンの存在を示唆する大量のガスの存在証拠がつきとめられたこと、銀河系中心部に初めて星形成現場が発見されたことなど、興味深い最新の研究成果も発表された。

<明らかになった新星の光度曲線>

(超新星爆発直前の連星の想像図)

超新星爆発直前の連星の想像図(提供:加藤万里子氏のサイト「新星風の理論の構築とIa型超新星の起源の解明」より)

日本天文学会林忠四郎賞を受賞したのは、蜂巣泉・加藤万里子の両氏。両氏は新星からガスが放出される現象についての計算方法を開発した。実際、新星の滅光の速さの違いは、30年来の未解決も問題であったのだ。両氏が、世界で初めて新星の光度曲線(星が明るくなってから暗くなるまでの明るさの変化)の計算を可能としたことで、新星のタイプの違いの原因もはじめて解明されることとなった。

<われわれの銀河系内にオリオン大星雲に匹敵する星形成領域発見>

(銀河系中心部の写真)

銀河系中心部にある星の誕生現場RCW 36(提供:名古屋大学)

また、名古屋大学の光赤外線天文学グループを中心とした研究チームは、南天の「ほ座」に、かなりの密度でひしめいている生まれたばかりの星の姿を明らかにした。同グループは、南アフリカに設置された口径1.4mの望遠鏡を使用して、銀河系中心の広い領域について高解像度、高感度の「近赤外カラー撮影」を行った。結果、今まで暗黒星雲に隠されて可視光での観測が不可能だった領域に、有名なオリオン大星雲に匹敵する密度で星が存在していることを発見した。

<バリオンの存在を示唆する大量のガス>

一方、宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部の研究者を中心としたチームは、現在まで存在のほとんどが見つかっていないバリオンの存在を示す観測結果を得ることに成功している。バリオンは、温度が10万度から1000万度程度のガス(温かい銀河間物質)として、フィラメント状に分布している。理論にしたがって、銀河団近くにこのような温度の物質を見つけることを目標に、30億光年離れたクエーサーと地球の間のX線スペクトルを観測・分析した。結果、予測通りの酸素の吸収線が検出され、その深さからおとめ座銀河団のまわりに大量のガスが存在することが示された。

今後もバリオン探査は続けられ、他の銀河団でも隠れたバリオンの存在が発見されることが期待されている。しかし、クエーサーの存在する方向にその観測が限られるため、バリオンの総量を知ることはまだ不可能だ。そこで、共同グループによって、バリオン(温かい銀河間物質)の3次元マップ作成専用衛星「DIOS衛星計画」が検討されている。

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