超音速で荒れ狂うベテルギウスの巨大な彩層

【2004年1月23日 CfA Press Release

NASAのハッブル宇宙望遠鏡に搭載された撮像分光計STISによる観測で、オリオン座のα星ベテルギウスから大きく広がっている高温ガスが発見された。

(ベテルギウスの衝撃波の想像図)

ベテルギウスの衝撃波のイメージ。青と紫の部分が彩層を突き抜けてゆく衝撃波で、低温のちり(オレンジ色と黒であらわした部分)でできた外層部分へと入っていく(提供:Alex Lobel, Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics)

このガスはわれわれの太陽にも見られる「彩層」で、コロナと光球の間にある薄い大気の層のことだ。太陽の彩層は、皆既日食で太陽の光球が月により完全に覆われた時、赤い色に輝いて見える。ベテルギウスの彩層は大きく広がっており、星の半径の50倍にもわたって伸びている。これは海王星の軌道の5倍に相当する大規模なものだ。

観測された彩層の温度は、摂氏2300度から1200度ほどと大きな差がある。上層部分にも熱いガスと冷たいガスが同居していることについては、衝撃波によってガスが圧縮されて過熱されるというモデルが考えられている。このように2種類の温度の異なるガスが地球の大気中でぶつかった場合には、台風のような強風が巻き起こる。同様に、ベテルギウスの彩層も荒れ狂った状態にあり、超音速の嵐が吹き荒れているのだろう。別の説としては、衝撃波ではなく彩層の振動というモデルも考えられている。

今回の観測結果は、赤い星や太陽のようなや黄色い星を包む温かいガスがどのようにして作られ維持されているのかというメカニズムを探る手がかりとなる。今後の研究では、他の恒星についてもより高精度の観測を行い、高温のガスが広がっているかどうかなどを調べたいとのことだ。

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