120億光年かなたの巨大な星形成領域

【2003年11月14日 HubbleSite - NewsCenter

NASAのハッブル宇宙望遠鏡の観測から、120億光年かなたに巨大な星形成領域が発見された。この領域は、これまでに見つかっているもののうちもっとも巨大で明るく、高温だということだ。

(やまねこ座アークのイラスト)

やまねこ座アークの想像イラスト。(提供:ESA, NASA and Robert A.E. Fosbury (European Space Agency/ Space Telescope-European Coordinating Facility, Germany))

やまねこ座アーク(リンクス・アーク)という名前の付けられたこの星形成領域は、有名なオリオン座大星雲よりも100万倍も明るく、銀河系内にある高温星の2倍も温度が高い青白い星が集まっている。しかし、地球から120億光年も離れているため、その派手な明るさを直接見ることはできない。

この星形成領域は、X線、可視光、赤外線で遠方の銀河団を系統的に調査している過程で発見されたものだ。やまねこ座の方向にある54億光年離れた銀河団の重力レンズの効果を受けて、その向こう側にある120億光年かなたの領域が赤い弧のように引き伸ばされて見えているのである。スペクトルを調べたところ、星形成領域としても有名なオリオン大星雲のものと関連があることが認められ、この領域が巨大な星形成領域であることがわかったのだ。

スペクトルをさらに解析すると、この領域に含まれている星々は摂氏8万度という超高温であることもわかった。銀河系内にはオリオン大星雲など多くの星形成領域があるが、やまねこ座アークほど明るく高温で多くの星を含んでいる領域はないということである。

このような高温の星が多く存在しているのは、やまねこ座アークが120億後年かなたにあることと関係があると考えられている。120億光年かなたということは、宇宙誕生から20億年ほどしか経っていない宇宙初期のようすを見ていることになる。そのような初期宇宙では現在の宇宙よりも重元素が少ないので、摂氏12万度にも達する太陽の数百倍もの質量を持つ星が生まれた可能性もあるということだ。