褐色矮星からのX線放射が検出された

【2003年4月16日 中央大学 ニュースリリース

NASAのX線衛星チャンドラによる観測で、褐色矮星から強いX線が放射されていることが明らかになった。木星のような大型惑星が大昔には自らX線を放射していた可能性も出てきたということである。

(連星系TWA 5A/Bの画像)

チャンドラによって撮影された連星系TWA 5A/B(提供:NASA/CXC/中央大学/坪井陽子氏ら)

今回観測されたのは「うみへび座」にある連星系TWA 5A/Bで、地球からは約180光年離れたところにある。連星の伴星(TWA 5B)は褐色矮星と呼ばれる分類の天体だが、褐色矮星は質量が太陽の8%未満と小さいため、恒星の中心で核融合反応を起こすことができず、自ら安定して輝くことはできない。ちょうど、太陽のような普通の恒星と木星のような大型惑星の中間の性質を持った天体であるとされている。

以前より、光学望遠鏡による観測でこの褐色矮星が存在することは知られていたが、X線による観測で主星と分離することに成功したのは今回が初めてである。さらに、その褐色矮星から太陽と同程度の強度のX線が放射されているのが観測された。太陽の質量のわずか2%(木星の20倍)しかない小さな天体からこのようなX線が検出されたのは、この連星系が誕生から1000万年ほどしか経っていない若い恒星系であることが原因ではないかと考えられている。

現在のところ、星からのX線放射は磁場の繋ぎ替えによって発生し、質量が同じ天体なら年齢が若いほどX線が強いという説が有力である。この褐色矮星の場合も、年齢が若いことがX線放射の重要な要因となっているのだろう。さらに、たとえば木星のようにさらに質量が小さい天体にも、大昔の若い頃には自らX線を放射するような高エネルギー現象があったかもしれないということだ。大型惑星から褐色矮星、普通の恒星に至るまでの星形成の謎を解き明かすためにも、今後の研究の進展が大いに期待される。