近赤外線で観測した、ハッブル・ディープ・フィールド南天領域

【2002年12月12日 ESO Press Release

ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLTでハッブル・ディープ・フィールド南天領域(以下HDF-S)を観測していた研究グループが、近赤外線のKsバンドと呼ばれる波長帯でその領域を撮影した画像が公開された。

(3つの赤い銀河の画像)

(上)HDF-Sに見られる、ひじょうに赤い銀河。左の列は可視光に近い波長で、中央の列は近赤外線波長で撮影されたもの。右の列は赤外線3波長のデータを使った疑似カラー画像(提供:ESO

HDF-Sは1998年にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した南天のきょしちょう座の一角で、満月の面積の1%ほどしかない狭い領域である。VLTはこの領域をのべ100時間以上も観測し、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えられなかった赤外線波長で多くの銀河を写し出した。

Ksバンドのほか3つの赤外線波長で撮影されたデータとハッブル宇宙望遠鏡が撮影した可視光波長でのデータを組み合わせて解析することで、銀河がどのくらい遠方にあるかを推定することができる。その結果、写っている銀河の中でもっとも遠いものは宇宙誕生からわずか2億年しか経ってないときに形成されたものであることがわかった。

さらに二つの興味深い結果も得られている。一つは、赤外線でなければ見えないような赤い銀河にはほとんど星形成活動が見られないということである。これらの銀河はすでに星形成を終えてしまったように見えるが、当時宇宙に存在した普通の物質のうち半分以上はこれらの銀河に集まっているとのことだ。もう一つは、近傍銀河に見られるような大きくて渦巻き構造を持った銀河もいくつか分布していることである。

研究グループは今後、同様の観測をもっと広範囲で行ないたいとしている。より広い範囲でたくさんの銀河を観測することで、銀河の形成や進化に関する研究がさらに進むことが期待される。

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