VLT が撮影した土星とイオ
地上から撮影したものとしては最高レベルの美しさ

【2002 年 2 月 1 日 ESO Press Photos

ESO(ヨーロッパ南天天文台)パラナル観測所の VLT(The Very Large Telescope)望遠鏡に取り付けた補償光学装置 NAOS-CONICA を使って撮影された土星とイオ(木星の衛星)の写真が公開された。地上から撮影されたとは思えないほど鮮明で美しい写真である。

土星:リングの王様

(VLT で撮影した土星の写真)

VLT が撮影した土星。リングや表面の細かい構造まで見える。土星本体の下の小さい点は衛星テチス(写真提供:ESO、テチスを示すマーカーはアストロアーツによる)

この写真は昨年 12 月 8 日に撮影されたもので、H バンド(波長 1.6μm)と K バンド(波長 2.2μm)という 2 つの赤外線波長帯で撮られた写真を合成したものである。この時期、土星は南半球側が夏至にあたり、輪がもっともひらいて見える。土星の南極(図の下側)には大きさ 300km ほどの暗い点が見られるが、赤外線での観測はこれが初めてだ。

赤道近くの明るい点は、5 年以上にわたって土星の上層大気で吹き荒れた巨大な嵐の名残である。また、カッシーニ、エンケの空隙や細いリングなど、土星の輪についても細かいところまで鮮明に写っている。土星本体の下に写っている小さい点は衛星テチスである。

イオ:火山と硫黄の世界

(VLT で撮影したイオの写真)

VLT が撮影したイオ(写真提供:ESO)

イオは木星の 4 大衛星(ガリレオ衛星とも呼ばれる)の 1 つで、4 大衛星の中では一番木星に近いところを公転している。ボイジャーが 1979 年に接近した際に撮影した画像から、表面は火山や溶岩で覆われていることがわかっていた。イオは太陽系内でもっとも火山活動の激しい場所といえるが、これはイオが木星の強い重力の影響を受けているためである。

表面の模様や色の違いは、火山性物質の中に含まれる硫黄成分の差によるものである。この写真は昨年 12 月 5 日に撮影されたもので、2.166μm 波長のフィルターを使用した。

なお、ニュースリリース元では、ボイジャーやガリレオ衛星、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した土星やイオの写真へのリンクがある。宇宙から撮影した写真と、今回公開された地上からの写真を見比べてみるのも面白いだろう。

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