小惑星によるポルックスの星食

【2001年12月6日 国立天文台天文ニュース (502)

2002年4月7日に、「ふたご座」の1等星ポルックスが、小惑星(55)パンドラによって隠される星食が起ります。この星食が見られるのは、新潟県から北関東にかけての地帯と思われます。小惑星によって1等星が隠されるのは非常に珍しいことです。

月によって恒星が隠される星食なら少しも珍しいことではなく、毎日のように起っています。たとえば、アルデバラン、スピカ、レグルス、アンタレスなどの1等星の星食もしばしばあります。しかし、実直径が小さいために小惑星による星食は比較的稀で、隠される星も暗い場合が一般です。今回のような小惑星による1等星の星食は、極めて稀な現象といっていいでしょう。

肉眼で見ているとすれば、この星食は、明るく光っていた1等星のポルックスが、突然に消える形で観察されるはずです。ただし消えている時間はほぼ5秒間、そのあと、再びポルックスは前のように明るく見え出します。これは肉眼で十分見える現象です。そして、その5秒の間に小惑星パンドラがポルックスの前を通過したのです。パンドラは西から東に向けて通過します。パンドラの明るさが13.2等ですから、大きな望遠鏡なら、パンドラが西側からしだいにポルックスに接近していく状況が見えるかもしれません。

この星食が起る時刻は日本時で4月7日の18時43分から44分の間です。西の方が多少早くなります。この日の東京の日没は18時7分ですから、たそがれの終わり近くの時刻帯に当たります。1.3等の明るさのポルックスはこのときほぼ天頂近くに見えています。晴れてさえいれば、なかなかいい観測条件でしょう。観測が可能なら、ぜひ見たい現象です。

パンドラは、その直径が70キロメートル足らずと推定されています。したがって、この星食が見られる範囲は、大略、幅が70キロメートルの帯状の地域だけです。この帯は、およそ新潟県、群馬県、栃木県、茨城県あたりを通過すると推定されています。しかし、これが非常に正確な推定というわけではありません。場合によっては、多少南北にずれる可能性も残されています。境界近くにいるなら、星食が起るか起らないかを確認する観測も意味があります。ビデオなどを利用して、この星食の開始、終了の時刻を正確に測定できれば、その結果はパンドラの精密な形を決めるのに役立ちます。当日までにはまだ時日がありますから、観測なさりたい方は、機材に、心に、それなりの準備をされるのがよいでしょう。

<参照>

  • 佐藤勲 月刊天文Vol.68, 1月号, p.62-64(2002).