デジタル・スカイサーベイ計画、初期成果を発表 最遠の天体を発見

【2001年6月11日 SDSS Press Release (2001.06.05)

史上最大の宇宙地図作成プロジェクト「スローン・デジタル・スカイサーベイ (Slone Digital Sky Survey; SDSS) 計画」の初期成果が発表された。SDSS計画は、全天の約4分の1の領域の詳細観測により、25億光年先までの1億以上の天体の位置や明るさ等を特定しようというひじょうに野心的な計画で、シカゴ大学 (アメリカ)、フェルミ国立研究所 (アメリカ)、プリンストン高等研究所 (アメリカ)、宇宙線研究所 (日本)、ジョーンズ・ホプキンス大学 (アメリカ)、マックス・プランク天文学研究所 (ドイツ)、マックス・プランク天体物理研究所 (ドイツ)、ニューメキシコ州立大学 (アメリカ)、プリンストン大学 (アメリカ)、アメリカ海軍天文台、ワシントン大学の共同プロジェクトである。

■ 最遠のクエーサー

赤方偏移6.2のクエーサー

赤方偏移6.2のクエーサー Credit: Donald Schneider and Xiaohui Fan, SDSS Collaboration

今回の発表では、赤方偏移6.0と6.2のクエーサーの発見も報告された。これらは、2000年にSDSS計画により発見された赤方偏移5.8のクエーサーを上回り、最遠の天体である。赤方偏移6.2のものは、宇宙が誕生してから8億年未満だったころに発せられた光と考えられる。なお、クエーサーとは、ひじょうに遠方にあって狭い範囲から莫大なエネルギー放出を行なっている天体で、巨大ブラックホールを含む初期の銀河の中心核と考えられている。

SDSS計画では、10万個のクエーサーの検出を目標としている。これまでのSDSS計画の観測により、すでに1万3000個のクエーサーが発見されている。最遠の30個のクエーサーのうち、26個までがSDSS計画による発見である。

■ 小惑星帯

SDSS計画では、5つの波長域を用いた観測により、火星〜木星間の小惑星帯の小惑星の多くを、化学組成の異なる2つの主グループに分けることに成功した。2つの主グループとは、岩石質のケイ酸塩小惑星と、より太陽系初期に近い化学組成を持つ炭素質小惑星である。

その結果、この2つの主グループには、位置分布に偏りがあることがわかった。それによると、太陽から2.8天文単位 (1天文単位は太陽〜地球間の平均距離で、約1億5000万キロメートル) の帯には岩石質のものが多く、太陽から3.2天文単位の帯には炭素質のものが多いということだ。

計画のメンバーであるワシントン大学のTom Quinn博士によると、このことは惑星系において一般的に起こる現象と考えられている惑星軌道の移行 (planet migration) が、私たちの太陽系においては起こらなかったかもしれないことを示すもので、太陽系の形成過程を探る上で重要な成果だという。

また、直径4キロメートル以下の小惑星はこれまで考えられていたより少ないということも明らかになった。地球軌道と交差するような軌道を持つ特異な小惑星も、もともとは主小惑星帯が起源であると考えられている。したがって、SDSS計画の小惑星研究グループのリーダーであるZeljko Ivezic博士 (プリンストン大学) によると「将来小惑星が地球にぶつかる可能性は、これまで考えられてきたよりは低くなったといえるかもしれない。」という。

■ 宇宙の大規模構造

SDSS計画により得られた宇宙の大規模構造に関するデータは、速度を増しながら膨張するという現在の宇宙モデルを支持するものである。

ジョーンズ・ホプキンス大学のAlex Szalay博士によると「私たちの得た物質の分布に関するデータは、近年の宇宙マイクロ波背景放射の観測から推定されるものと整合するものだ」という。

また、SDSS計画により、銀河の種類の起源に関する長年の疑問にも回答が見え始めてきた。

オハイオ州立大学のDavid Weinberg教授によると、「銀河はその種類によって異なる群れ方をしているようだ。これは、銀河はそれを取り巻く環境の影響を受けているということを示唆している。」という。

■ 大規模なデータ供給

SDSS計画は、初期のデータを世界の天文学者に向け供給することを発表した。これは、500平方度ほどの領域のデータで、500ギガバイトの画像データ、1400万個ほどの天体、5万個の銀河と5000個のクエーサーのスペクトルが含まれる。最終的には、5年間のサーベイにより得られる全てのデータを、天文学者や一般に向け公開する計画である。

このような大規模なデータ供給は、天文学史上最大のものである。

ジョーンズ・ホプキンス大学のAlex Szalay博士によると、このデータにアクセスするうえでキーとなるのは、マイクロソフト・ベイエリア研究センターのJim Gray博士の協力により開発された『SkyServer』と呼ばれるインタラクティブなインターフェイス・ソフトウェアだという。そして学生や一般人の使用に最適化されたバージョンの『SkyServer』も現在開発中とのことだ。


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