大マゼラン雲のウォルフ・ライエ星が異常増光中

【2001年5月1日 VSOLJニュース (053) 2001.04.29】

オーストラリアの Michael Mattiazzo から国際変光星ネットワーク(VSNET)への通報によれば、大マゼラン雲(LMC)の中の、LMC V3804 と呼ばれるウォルフ・ライエ星が、過去に例をみないほどに明るく輝いているとのことです。ウォルフ・ライエ星は長谷田さんが特異変光を発見された「うずまき星」(VSOLJニュース051参照)もその仲間ですが、大質量で、星の外側の水素がはぎ飛ばされた段階の星です。これらの星は遠くない将来に超新星爆発を起こすと期待されています。

LMC V3804 が注目を浴びているのは、その明るさだけではありません。この星は有名なタランチュラ星雲の中にあり、約4世紀ぶりに肉眼で見えた超新星1987Aがこのすぐ近くで爆発しているからです。LMC V3804 が明るくなっているのを見た観測者からは、新しい超新星の出現とすら思えた、との報告があります。この星の性質を考えれば、この印象は決して大きく外れたものではありません。

LMC V3804 は現在9.0等ぐらいと報告されています。この光度は大マゼラン雲全体でもトップクラスの明るさであるのみならず、タランチュラ星雲付近で現在最も明るい星になっています。日本からは残念ながら見ることはできませんが、南半球に観測に行かれる方は、ぜひこの光景をご覧になられることをお薦めします。天体の位置は2000.0年分点で以下の通りです。

赤経: 05h 38m 42.4s
赤緯:-69゚ 06' 02"

著者 :加藤太一(京大理)
連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp

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