金津さん発見のとも座の新星らしき天体 (続報)

【2001年1月10日 VSOLJニュース (048) (2001.1.7)】

金津和義さんがとも座に新星らしき天体を発見されたことは VSOLJニュース (046) でお伝えしましたが、この天体はその後の観測・調査によって非常に変わった天体であることが明らかになってきました。このニュースでは、現在までに判明している情報をお伝えします。

まず、新星と思われる天体の位置が複数の観測者によって精密に測定されました(安部裕史さん、京都大学の画像からG. Masi、門田健一さんほか)。門田さんによる位置は以下の通りです。他の報告もこの値とほぼ完全に一致しています。

     07h 37m 56.88s  (J2000.0)
    -25゚ 56' 58.9"

Possible Nova in Pup

これらの観測の結果、爆発前の天体の位置に14等級の星が存在していたことが確実になりました。この天体は高見澤さんの過去の写真に捉えられており、過去に大きな変動を示していなかったことが判明しています。もし天体が新星であるとすると、爆発の振幅は6等星ぐらいと、新星の中でも異例に小さいものであるとともに、爆発前の姿が記録されていた新星としては、過去約30年のうちで最も明るいものになります。さらに、長谷田勝美さん、中村祐二さんの写真に発見前の姿が記録されており、天体は2000年 9月末から11月下旬までの間に急激に増光したことが確認されています。

天体の正体解明の鍵となるスペクトル観測は、昨年12月31日にいちはやく撮影された藤井貢さんをはじめとして、これまでに少なくとも5件が報告されています。いずれのスペクトルにも鉄を中心とした多数の輝線が認められ、また膨張ガスの運動を示す特徴も認められ、爆発型の天体であることは間違いないようです。鉄の輝線の特徴は新星に似ていますが、水素の輝線の存在がはっきりしないなど、これまでに知られているどの新星のスペクトルとも異なるものでした。その他にも知られている爆発型の天体にも似たものがなく、新種の新星、あるいは我々がまだ経験したことのないような変わった種類の天体の可能性もあります。特異な天体は発見者の名を付けて呼ばれるようになることがありますが、あるいはこの天体も未来の研究者によって「金津天体」と呼ばれるようになるのかも知れません。

なお、VSNETでは以下のページを用意しています。これまでに報告された光度観測の結果やCCD画像などを見ることができます。天体は引き続き9等前後の明るさを保っており、望遠鏡を使えば比較的簡単に見ることができると報告されています。

Possible Nova in Pup

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