アメリカの高校生チーム、チャンドラとVLAを用いて中性子星を発見

【2000年12月21日 CXC PR: 00-28 (2000.12.11)

アメリカの高校生の研究チームが、NASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」とアメリカ国立科学財団 (NSF) の超巨大干渉電波望遠鏡VLAを用いて、太陽系からおよそ5,000光年に位置する超新星残骸「IC433」に中性子星を発見した。中性子星は、超新星爆発を起こして寿命を終えた巨星の核の名残り。コンパクトで超高密度の天体であり、典型的には直径10キロメートル程度で太陽程度の質量を持つ。

チャンドラがとらえたIC433

チャンドラがとらえたIC433
右下の明るい部分が中性子星。星雲の彗星状の形状は、中性子星が超新星残骸の中で移動していることを示唆している。チームはその形状から中性子星の移動速度とこれまでに移動した距離を求め、この中性子星を形成した超新星爆発の光が地球に到達したのはおよそ3万年前であると推定した。

研究チームは、ノースカロライナ科学・数学スクール (North Carolina School for Science and Mathematics; NCSSM) のCharles Olbert君 (18歳)、Christopher Clearfield君 (18歳)、 Nikolas Williams (16歳) の3名。

チームは、彼らの科学の先生であるJonathan Keohane博士を通じてチャンドラの観測時間を申請し、異例にも認められた。そして、高分解能を誇るチャンドラの観測画像から、IC433に点状のX線源を発見した。

さらに、その発見が中性子星であることを確定するため、アメリカ国立電波天文台のDale Frail氏から、超巨大干渉電波望遠鏡VLAによるIC433の観測データを得た。中性子星は多くの場合は周期的に電波を発するパルサーとして観測されるが、IC433の電波観測データには周期性は見られなかった。しかし、観測データは、点状の電波源とそれを囲む高エネルギー電子の雲の存在を示していた。このような雲は、中性子星の周囲に典型的に見られるものであった。

チームを指導したKeohane博士によると、彼らはあらゆる分析プロセスを彼ら自身の手で行なったという。そしてチームは、夏休みの間ずっと研究を続け、論文をまとめた。

IC433は、プロの研究者によってもよく研究されてきた天体である。この論文に関して批評を行なったBryan Gaensler氏 (マサチューセッツ工科大学所属、中性子星に関する専門家) は、「これは確たる科学的発見です。彼らを手伝った全ての人は、この業績を誇りに思いなさい。」と絶賛している。

この論文は、『Astrophysical Journal』誌に掲載され、チームをシーメンス-ウェスティングハウス科学技術コンペティション (非営利財団であるシーメンス財団が主催) において最高位に導いた。

チームリーダーのOlbert君は、「新しくそして確かな科学を手がけるという経験は、僕の経験のなかでも最もやり甲斐のあるもののひとつでした。そして、まだ高校生のうちに自分たちの論文が科学誌に掲載されるなんて、思ってもみませんでした。」と、この研究を手がけた感想を語っている。


画像提供: NASA/NCSSM/C.Olbert