チャンドラ、ガンマ線バーストの余光のX線分光観測に成功

【2000年11月8日 CXC PR: 00-24 (2000.11.3)

チャンドラがとらえたガンマ線バーストGRB991216の余光とそのX線スペクトル

NASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」が、ガンマ線バーストGRB991216の余光 (アフターグロー) のX線分光観測に成功した。得られたX線スペクトルには明瞭な鉄の輝線が複数認められた。ガンマ線バーストに明らかに関連するX線域でのスペクトル輝線が観測されたのは今回が初めてである。

ガンマ線バーストとは、宇宙の一点から突然多量のガンマ線が爆発的に放射される現象であり、ビッグバン以後の宇宙でもっとも大規模の爆発現象として知られるが、短期間で収束してしまうため観測が難しく、いまだ謎に包まれた現象である。その正体については、2つの超高密度天体――中性子星やブラックホール――が衝突・融合する際に生じたものであるとする説や、超巨星が崩壊する際の大爆発である「超超新星爆発 (hypernova)」(超新星爆発と似たプロセスだが、ずっと規模が大きい) であるとする説などが考えられている。

今回観測された鉄の輝線は、ガンマ線バーストを引き起こした爆発現象により放出された物質によるものと考えられる。

まず、輝線の赤方偏移から、発生源までの距離が大雑把に80億光年程度であることがわかった。これは、光学分光観測により求められたGRB991216の母銀河であると考えられている銀河までの距離とよく一致している。

そして、距離や輝線の強さなどを総合して、ガンマ線バーストの周囲の直径およそ1光日〜2光日に含まれる物質の質量が、少なくとも太陽質量の10分の1程度であることがわかった。さらに、輝線の間隔から、放出された物質が光速のおよそ10%という超高速で拡散していることもわかった。

この観測結果は、「超超新星爆発」説を支持し、2つの超高密度天体の衝突・融合とする説を否定するものである。

「超超新星爆発」説が想定するシナリオは、超超新星爆発においてまず恒星の外層部が放出され、続いて恒星の核が潰れてブラックホールとなり、このブラックホール化の際に放出される莫大なエネルギーが拡散する恒星の外層部を過熱して余光を発生させるとするものだ。

GRB991216は、1999年12月16日にNASAのコンプトン・ガンマ線天文台衛星により検出された。コンプトンが検出したガンマ線バーストとしては最も明るいもののひとつだった。続いてNASAのX線観測衛星Rossi (RXTE) の観測により、より高精度の位置情報が得られ、チャンドラは初検出から2日後の12月18日にこのガンマ線バーストの余光を観測することに成功した。観測は高エネルギー格子分光器 (HETG) と高度CCD分光撮像機 (ACIS) により、観測時間は3.4時間だった。


Image credit: NASA / CXC / Piro