イリジウム衛星群、2002年までに全機破壊

【2000年9月21日 SPACEFLIGHT NOW (2000.9.20)

破たんした衛星電話会社イリジウム社に出資していたモトローラ社は、イリジウム社の買い手がみつからなかったことから、イリジウムの通信に使用されていた66基の衛星群をすべて地球大気に突入させ破壊することを決定していたが、最後の衛星の破壊は2002年になる予定。破壊のための準備はすでに進行中。

イリジウム衛星の通信は、電波天文学においてOH(ヒドロキシル・ラジカル)の観測に用いられる1612MHz帯と干渉してしまうため問題となっていた。OHの観測は、彗星からの蒸発成分の分布観測や、恒星の誕生や死の観測手段だ。

また、天文ファンの間では、イリジウム衛星は、数が多いため、衛星の通信アンテナや太陽電池パネルに反射された太陽光が、たまたま地上の観測者に直接当たったときに、数秒間だけ明るい光点が観測される「フレア」と呼ばれる現象がよく見られることで有名。特に、イリジウム衛星の場合、通信アンテナが太陽光を強く反射するため「フレア」は明るく、条件が良ければ最大でマイナス8等級という鮮烈な輝きが見られる。

この「フレア」は、光害の少ない高原に出かけて天体写真を撮影している天文ファンの間では、天体写真の見栄えを害する悪玉として嫌われてきたが、一方で、明るいため都会でも容易に観測できることから、都会の天文ファンには人気のある人工天体だった。

しかし、イリジウムが去った後には、Bill Gates氏やCraig McCaw氏の出資によるTeledesic社のインターネット衛星網の打ち上げが控えている。288基の低軌道衛星から成り、2004〜2005年のサービス開始を目指している。

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