ハッブルがとらえた原始惑星状星雲CRL618

【2000年9月4日 ESA SCIENCE - HUBBLE PHOTO RELEASE (2000/8/31)

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)は、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影した、原始惑星状星雲「CRL618」の画像を公開した。

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影した、原始惑星状星雲「CRL618」

CRL618は、私たちの太陽に似た恒星が、その進化の最終段階において、その質量の大部分を放出した直後の姿。これはいわば羽化しつつある惑星状星雲のさなぎの姿ということができ、やがて蝶が羽を広げたように見える「バタフライ型惑星状星雲」に進化すると考えられる。CRL618の姿がここまで詳細にとらえられたのははじめてのことだ。

私たちの太陽と同程度の質量の恒星は、その寿命の大部分の時期は、現在の私たちの太陽のように、淡々と核融合――水素どうしが核融合しヘリウムとなる――を続けて輝く。やがて核の水素を使い果たすと、急速に膨張し、低温で赤く巨大な赤色巨星となる。赤色巨星は物質を緩やかな恒星風として徐々に放出していく。

そして質量の大部分を放出してしまうと、高温の輝く核が露出し、周囲に広がるガスを照らし出す。これが、原始惑星状星雲と呼ばれる状態だ。同時に、高速の恒星風が放出されはじめ、周囲のガスを吹き飛ばしていく。吹き飛ばされたガスは、やがて蝶の羽のような構造を形作り、バタフライ型惑星状星雲となる。原始惑星状星雲から惑星状星雲に進化する過程の期間は、200〜300年から千年程度と考えられている。

CRL618の星雲を形作るガスは200〜300年ほど前に放出されたものと考えられ、今はガスに覆われて直接見ることができない中心の恒星からの光が、星雲を照らし出している。以前の観測から、ジェット状の構造を形作るガスは、時速70万km以上の速度で広がっていることがわかっている。

CRL618はひじょうに急速に進化しつつあるため、ここ20年間の観測から、その形状の変化が直接検出されている。形状の変化が直接観測できた天体は、数少ない。HSTの目を通せば、その羽が広がりつつあるようすを詳細に観察することができると考えられる。CRL618の観測を通して、惑星状星雲の誕生と進化に関する理論を検証する上で、重要な成果が得られることが期待される。

画像提供: ESA / NASA